557 / 849
第十二篇第五章 繋がれて行く絆
訣別の刻
しおりを挟む「スマねぇティア嬢ッ!!もう一丁頼むワッッ!!」
ギルドの声が飛び、託されたティアはほんの
少しの沈黙の後で静かに頷いた。
其の表情からは何かを押し潰したかの様な
辛さは見て取れたがティアは行動を起こす。
またしても大監獄プリズングァザの遥か外へ
繋がれる撫子色の流水の道を作り出し幾つか
の星型の足場をも形成した。
其れにエルヴィスの肩を強く抱いたギルドと
アドリーへ抱き付いたままのリズが飛び乗り
ロード達も其処へと続く。
そしてティアの三叉槍が流水の道に触れた次
の瞬間に其の流れが一気に早まりまるで虹を
掛けるかの様に星型の足場が流れ行く。
「エルヴィスッ…!恨むなら俺を恨めッ!処罰なら何だって受けてやるッ!!だがなッ…ヒューズの覚悟を無駄にするつもりなら…俺はお前を二度と許さねェ!!」
ギルドの真っ直ぐな視線にエルヴィスとリズ
の視線を受けたアドリーが押し負ける。
そして、振り返った二人が声を合わせ眼下に
立ち尽くすヒューズへ叫ぶのだった。
「「ヒューズーーーーーッッ!!!!」」
其の声はヒューズへと届き、ヒューズは胸を
熱くさせながら眼前のララ達を見遣る。
「やってくれたな……貴様」
「うん。やってあげたさ…僕の一世一代の決心でね」
「だが、甘いわ。貴方を捕らえる。そうすれば何れまた……反乱軍自体を潰すチャンスが訪れるのよ?」
「そうはならないさ…君達にとっては残念だろうけどね」
ヒューズの反応にララとマッドは訝しむ様な
目でヒューズの目を見詰めていた。
「絶技…… 槍旋一擲・馬蹄草ッッ!!」
突如として振り被ったヒューズがジャベリン
をララ達に向けて投擲し放った。
其のジャベリンは拡がった羽衣の中を通って
加速して行き、ララ達へと迫る。
「悪足掻きを…!」
ヒューズの放った大技はララとマッドの放つ
ギフトのチカラに因って掻き消された。
しかし、土煙が蔓延る中でララとマッドが次
に目にしたヒューズは背を向けて空を眺めて
おり行動が読めずにいた。
「うんうん。此れでやっと完全に視界からエルヴィス達が消えたね」
改めて振り返ったヒューズは覚醒を解いて
ララ達に笑みを浮かべて視線を送る。
「何の真似だ……貴様……」
「僕の役目はエルヴィス達を一度君達の視界から完全に消す事だった。そして其の次に控えてる役目を果たさなければ大将さんの言う通りになってしまう事ぐらい解っていたんだよ」
「まさか………」
ヒューズはララ達の目の前で胸元に自身の手
に在ったジャベリンの先端を突き立てる。
「そう言う事。僕は…此処で自らの手で死を選ぶ…覚悟はとうに出来ていたんだ」
ララ達が其の行動に絶句する中、ヒューズは
静かに目を閉じて心の中で呟く。
「(ありがとう……皆。託したよ僕の想い……!)」
そして、自身のジャベリン型の槍の先端が
自身の心臓を貫くのだった。
60
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる