RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十二篇第五章 繋がれて行く絆

“手と手を”

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「行かせないッ……!」



空中から迫る革命軍ティアを見据えてララが
身構えた瞬間だった。



「此れは……あの男か………」



まるで沼の様にララとマッドの足を呑み込む
青鈍色の粘り気のある土。

マッドが目を向けた先にはボウガンを腰元に
仕舞い込み両手のひらを地面に押し当てた姿
のザックがいた。



「足止めはほんの一瞬ですよッ…!」


「ああ…。充分だッ!!」



粘り気のある土に足を取られて体勢を少しの
間ララとマッドが崩している其の隙に双剣を
真横に伸ばし構えたエルヴィスが跳ぶ。



「ティアッ!!振り返る事はねェ!!俺等を信じろッ!!」


「はいッ!!」



ティアに声を飛ばしたエルヴィスの身体から
金色の雷が大気を揺らす程に迸る。



「絶技…… 雷霆獅子王斬らいていししおうざんッッッ!!!!」



真横に伸ばした双剣を胸の前でクロス状の形
に構え直すとエルヴィスの背後に大きく口を
開き咆哮を放つ雷の獅子が現れる。

其の雷の獅子と共に一気に滑空を始めた雷を
纏うエルヴィスの一撃が一閃となる。

迸る雷の其の一閃がララとマッドに直撃して
地を走る雷霆が3rdフェーズを包み込む。

ほぼ、タイミングを同じにして革命軍ティア
が鍵を手にアドリーの牢の前に降り立つ。

慌てながらも心を落ち着かせ其の牢の錠前に
鍵を通し、ふわりと優しく其の扉を開けた。



「………ッ…ティアッ……!!」


「孤独を良く耐えましたね、アドリー」



優しく微笑みを浮かべたティアの言葉に涙の
止まらないアドリーは頷いて見せる。

そして、アドリーを繋ぎ止めていた鎖が遂に
ティアの託された鍵に依って解き放たれた。



「ありがとう……ティアッ!」


「私達は…親友ですっ…アドリー…だから、何も可笑しな事なんてありません」



十年もの歳月を離れ離れに過ごした二人の手
が今、静かに緩りと力強く繋がれる。

其の姿を見たエルヴィスとザックは達成感と
何とも言えない懐かしい光景に身体に震えを
覚えて目頭が熱くなる。



「さあ、お暇しましょう」



手を繋ぎながら三叉槍を片手で回転させた
ティアから撫子色の流水の道と星型の水流の
足場が用意されエルヴィス等は其れに反応し
急いで身を乗せる。



「此の様な失態……許される筈が無いわッ!!」



エルヴィスの絶技のダメージから一早く体勢
を立て直した大将ララの薔薇色の荊の増殖が
進み流水の道を行くエルヴィス等を襲う。

すると、静かにアドリーが足場の上に立つ。




「覚醒……“ 氷雨弓騎レインアーチャー”……!」



アドリーの覚醒が巻き起こる。

ポニーテールや手袋が空色の氷のデザインの
アクササリーへと変化し、類似した防具をも
纏ったアドリー・エイテッド。

お尻には空色の氷で出来たリスの尻尾が可憐
に現れると手から特性“造形”に依って氷の弓
を生成しララへと向けた。

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