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第十二篇第五章 繋がれて行く絆
対立を飛び越える奇跡
しおりを挟む大監獄プリズングァザの3rdフェーズ最深部
では大将ララ、監獄署長マッドの前に奪還を
阻止され立ち止まるエルヴィスとザックの姿
があり未だにアドリーは鎖に繋がれたまま。
突然、刻が止まったかの様に静けさを保った
最深部でふとザックが背後を振り返る。
「……エルヴィス……聞こえますか?」
「聞こえるって…こんな時に何だよっ…」
エルヴィスは心が折られ平常心を保てなく
なった状態で飛ばされたザックの声に焦りで
ぶっきらぼうな返答をする。
だが、そんなエルヴィスをも冷静にさせる程
ザックが聞いた其の音が近付いて来る。
音を高鳴らせ流れ来るのは、まるで下流へと
勢い良く流れ込む激流の音。
其の音はひたすらにエルヴィス達のいる場へ
秒毎に近付いて来ているのは間違いない。
エルヴィスは其の背後を眺め始めた。
そして、視界に撫子色の流水が更なる音色を
奏でて勢いを増して行くのを視界に映す。
すると、エルヴィスだけでなく最深部の奥の
牢に繋がれたアドリーもまた其の光景の中に
映り込んだ人影に目を丸くし口を大きく開き
驚嘆の表情を浮かべ始めた。
完全にフリーズしたエルヴィス。
身体の震えが止まらず胸を高鳴らせて流水の
流れをひたすら見守るザック。
そして、其の光景に目を遂には向ける事すら
出来ずに大粒の涙を流し始めたアドリー。
三者三様の反応から伝播し帝国軍大将ララは
目の前で起きた此の件に関し唇を噛んだ。
激流の音だけで支配された最深部に於いて
エルヴィスが初めて口を開く。
「嘘だろ……ッ……奇跡…起きてんじゃねぇかよッ!!」
そして、遂に撫子色の流水が3rdフェーズの
最深部へと流れ込み其の流水の上で膝を軽く
曲げて三叉槍を下段に構えたまま純白の団服
を身に纏った三つ編みの女性が到達した。
其の女性は撫子色の高波の様になった流水の
上を蹴り上げ全員の上空へと達する。
其の瞬間、ボロボロと大粒の涙を流していた
アドリーが遂に顔を上げて叫ぶ。
「ティアッッッッッ!!!!」
其の名を呼ばれ空中で体勢を立て直しながら
降り立つ様に落下する其の女性がアドリーに
優しき微笑みを浮かべて口を開く。
「お待たせしましたッ!!アドリーッ…!」
起きた奇跡が白と黒、対立する二色の団旗を
軽々と飛び越えて此の窮地に駆け付けた。
革命軍副長ティア・ミルキートライヴ。
此処に、参戦ー。
其れを見たエルヴィスが真下からティアへと
何かを思い切り投げ込みながら叫ぶ。
「ティアッ!!其のまま…突っ込めェ!!」
空中でヒラリと身体を旋回させたティアは
其の投擲物を片手で優しく抑え込むと掌の中
の其の物を確認しギュッと握り締める。
そして、更に身体をヒラリと旋回させ最深部
の牢の中に囚われたアドリーの姿を其の瞳に
映し込んで決意を固めた。
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