RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十二篇第四章 烈しさを増す大事件

監獄署長マッド・ゲルティーノ

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「一つ問おう。侵入者…貴様は見た所…反乱軍とは思えぬ姿だ……何者だ?」


「私は…ザック。縁あってアドリーやエルヴィスの幼少期を共に過ごして来た者です。其の縁一つで彼女を救いに来ました」



監獄署長マッドは後ろ手に組んでいた手を
解き顎から長く伸びる髭をさすりながら静か
に口を開くと低い声で言い放つ。



「傍迷惑なモノだ。此処はプレジアに於いて生まれ出でた罪という罪を総て抑え込む地獄の大監獄……罪に対し一切の妥協を許さぬからこそ此の監獄に意味が宿るのだ。其れを縁一つで崩そうとは…笑止千万…見過ごせぬ」



マッドの言葉にザックは優しく笑みを浮かべ
言葉を紡ぐ為に口を開く。



「正しく政府の方が言いそうな言葉ですね。ですが……そんな事は百も承知です。ですが彼女を死なせたくない…傍迷惑を我儘を今回ばかりは……貫かせて貰います…!」



ボウガンの射出口をマッドに向けたザックを
見遣りながらマッドもまた鉈を手に取り応戦
の構えを取る。



「ならば問答に意味は宿らぬ。其の身を以って地獄を見て行くといい」



鉈の持ち手をくるりと手首で旋回させマッド
は其の刀身に柳色(やや白みのある黄緑色)の
業火のギフトを解放する。

そして、マグマの様に滾る柳色の炎が鉈を
通してボタボタと落ちると共に緩りとザック
を標的に前へと歩き始めた。



「本当に久方振りです……正真正銘の命の危機と隣り合わせの戦いは…!」



ザックの身体に宿りしは大地のギフト。

青鈍色(暗みの深い青に近い灰色)のオーラを
込めたボウガンから牽制の意味を込めて一矢
を放つと其の矢がマッドへと迫る。

しかし、マッドは其の矢を鉈を振るう事すら
せずに身体の前面に発言した柳色のマグマの
熱量で溶かして見せた。



「煉獄の炎に焼き尽くせぬ物等、在りはしない。さあ、後悔の時間だ……貴様の罪を指折り数えながら執行を待て」



歩きながら鉈を足元の地面に突き立てた事で
鉈の先端からみるみる内に柳色のマグマが熱
を帯びながらザックの足元へと迫る。

しかし、ザックは膝を折って手のひらを其の
地面に押し当てると大地のギフトの特性の
一つ“粘土”に因って自身の半径数メートルを
マグマの辿り着けぬ状態へと変えて見せる。

だが、マッドは表情一つすら崩さない。

鉈を二度ほど床に押し当てると金属音を奏で
床を覆ったマグマが青鈍色の粘土のサークル
をジワジワと侵食して行く。

沸々と熱量が増し続け汗が額から滲み出す
ザックは歩みを止めずに距離を詰めて来る
マッドを見遣りほんの少し表情を歪めた。

だが、其処で手に持った鍵を見詰めた後に
3rdフェーズの詰所の前から中央へと長く
伸びる通路の先にとある人影を確認した。

其の人影がザックの方向には脇目を振らずに
あの場所を目指して行った事でザックもまた
やるべき事を再認識するのだった。



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