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第十二篇第三章 激震の大監獄
大監獄最深部に届く大事件
しおりを挟む此処は、大監獄プリズングァザの最深部。
3rdフェーズに囚われたアドリーの牢の前に
置かれた椅子に片足を掛けて座り込む大将の
ララに最新情報が届く。
『御報告致します…現在、プリズングァザの外庭エリアに送り込まれた戦力は既に…壊滅状態……更に護国師団反乱軍総長エルヴィス・ハワードを筆頭に1stフェーズへの侵入を許しました……!』
大将ララは其の無線の相手に静かな声で次の
指示を出す為に口元を近付ける。
「状況は解りました。狙いは…護国師団反乱軍参謀…アドリー・エイテッドと見て間違い無いでしょう…。2ndフェーズから此の3rdフェーズに来るには看守用リフト又は…南の大階段のみと聞いています。看守長リフトは一時運行を停止させ…クロス中将に2ndフェーズの守護は一任して下さい…」
大将ララの指示を受けた無線相手は内心から
溢れる焦りを見せながら返事をすると無線の
通信をバタバタと切った。
すると大将ララはアドリーの牢に背を向けた
まま立ち上がると静かに口を開く。
「さあ、最悪の事態になったわね。貴女が自身の身を投げ打って作った仲間達の撤退の道を逆走したかの様に反乱軍が攻め込んで来たわ…!」
「……そんな…どうして…皆…ッ…!」
「貴女ならどうするの?逆の立場だったとしたら…」
「……ッ…!」
大将ララから放たれた其の一言にアドリーは
言葉を完全に失ってしまっていた。
そして、頬に伝う涙、一雫。
解っていたのだろう、アドリーは恐らくこう
なってしまう事を。
しかし、あの時、あのタイミングでは彼女に
取れる行動パターンは此れしか無かった。
度重なる戦いに傷付いたアドリーの身体では
あの時撤退を図る程の体力は既に残ってすら
いなかったからだ。
だからこそ、仲間の為に身を差し出した。
しかし、ララの放った一言はアドリーの辛く
苦しい胸の内を簡単に引き摺り出す。
彼女以外の誰かが此の道を選んでいたならば
彼女は迷う事無く救出する事を望んでいたで
あろう事は明白だった。
だが、其れがとても険しい茨の道である事も
アドリーは頭の中で理解してしまっていた。
だからこそ、咄嗟に言葉が溢れてしまう。
「……お願いッ……皆…戻って…此処は政府の施設…大将や中将…監獄の戦力が集まってる…勝てるワケ無いんだ……生きてよッ…お願いだからッ…来ちゃダメーーッッ!!」
涙ながらに叫んだ声が3rdフェーズに在る
アドリーの牢の部屋に響き渡る。
地下の冷たい壁が其れを簡単に吸収すると
溶けて消え失せて行く。
叫んだ所で、届く訳も無い其の声がララの耳
にだけ深く沈んで行った。
そして、大将ララも又、此の最悪の大事件を
前に少しずつ集中力を高めて行く。
政府にとって此の大事件がアドリー救出成功
を描き出す事だけは避けなければならない。
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