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第十二篇第二章 プリズングァザ救出戦
バルモアの英雄
しおりを挟む「躱したとて向かって来るのであれば…躱す事等無かったという事でしょう」
レザノフがポツリと呟く。
其の声は大人数が混ざり合う此の戦場の中に
あってバレットの耳には届かない。
すると、向かってくる水流の鮫の正面に鋼の
板が何枚も何枚も覆い重なり鮫達の攻撃全て
を防ぐと共にレザノフの身体すらもバレット
の視界から消して行く。
鮫達は其の何重にも重なった鋼の板へ頭突き
を何度も何度も繰り返すが其の鋼の板はビク
ともせずレザノフを守っていた。
「防御に全てを注いだか。そやけど、其の状態じゃ形勢逆転とは行かへんな…さあ、いつ限界を迎えるか、楽しみにしといたろか」
ニヤリと笑みを浮かべたバレットは鋼の板に
囲まれて鮫達の怒涛の攻めを耐えるレザノフ
に向けて言葉を吐き捨てる。
しかし、鋼の板に囲まれたレザノフは静かに
笑みを浮かべながら片膝を着いていた。
そして、二丁のライフルを前方へと向けると
ほんの少しの鋼の板の隙間からバレットとの
距離を測り其の姿をスコープに捉えた。
「(限界はとっくに超えているんです…此の身体では後何度の戦いを切り抜けられるのか…既に解らないんです……)」
歴戦の英雄と呼ばれたバルモア国の歴史の中
に燦然と輝く功績を持つレザノフ。
プレジアへの侵攻を幾度も経験し其の度に
プレジアの強者達と武を競い続けた。
特に運命の様に再会したガルフとは、最も
深い因縁を持っているのだ。
彼の身体に刻まれた大きな古傷。
此の傷が一度はレザノフを引退の道へと追い
込んだが其の戦いで得た称号こそ英雄。
深手を負ったとはいえ、ガルフの片目を奪い
互角に渡り合った事はバルモア側にとっても
名誉として刻まれる出来事だった。
其の古傷が痛む度にレザノフは其の戦いを
何度も何度もなぞる様に思い出す。
しかし、全身に奔る其の痛みが英雄レザノフ
の限界をも表していた事も又、事実である。
「(英雄とは…伝説とは…過去なのです。死を持って其の物語は完結を迎える…しかし、私は何と幸せ者でしょうか?私達が生きた若き時代は答えには辿り着けなかった。だが…今を生き未来を造る若者達が…其の未来を鮮やかに…描いてくれる…だから私は繋ぐ為に此処に来た…!)」
表情は一つも変えないがレザノフの身体は
古傷の痛みで軋み、悲鳴を上げ続ける。
だが、繋ぐ事こそ彼の本懐である。
英雄とは過去、今を生きる若人達の道を繋ぐ
者として生きている今の全てをレザノフの心
から身体へと流し込む。
其れは覚悟の一撃。
レザノフのライフルと身体が鈍色のオーラを
纏って圧倒的な波動を発していた。
「鉄鏡絶技……!」
バレットは鋼の板に覆われたレザノフから
異常とも呼べる圧を感じ其の衝撃波の様な
オーラに完全に気圧されてしまった。
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