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第十一篇第四章 未来へ灯す希望の光
慟哭の底へと沈み行く
しおりを挟む脳内から身体へと疾った戦慄の悪寒。
其の正体は解らずとも其の男はひた走る。
飄々とした振る舞いをする彼が額から大粒の
汗を垂らして不恰好な様で足を早める。
そして、其の彼が足を止めた。
眼前に映る光景に言葉が出て来ない。
「U・J……ごめん。私が来た時にはもう…」
眼前に映る其の歪な光景に愕然とした表情を
浮かべながら立ち尽くすU・Jに声を掛けた
のは一足先に其の場へと到着していた同じく
帝国軍の中将マリア・シリウスだった。
U・Jはマリアの声に反応すら出来ない儘に
彼の視界を占有し思考を全て奪い去る無慈悲
な其の光景の中心へとトボトボと歩み寄る。
ほんの数メートルの距離だった筈なのに其の
足取りはとつてもなく遅い物だった。
そして、倒れ込む人間の元へとやっとの思い
で辿り着いたU・Jは膝から崩れ落ち其の男
の顔を優しく震える手で持ち上げる。
U・Jの肩がガタガタと震えている。
其の光景と其のU・Jの姿にマリアは限界を
迎えて顔を背け凍える身体を腕で抱く。
「……オイ…何の冗談だ?起きろよ…オイッ!あんまりおちょくってっとよ…ブッ飛ばすぞッ!!……なあ、オイ…何とか言えよ…ッ…!ほら…ドッキリ大成功…ッ…とかよ…!」
サングラスの奥から零れ落ちる涙の雫が頬を
伝って死に行く男の頬へと流れ落ちた。
「……死んでる。其れしか確認出来てない…」
「嘘つくんじゃねェ…!こんな…ッ…こんな馬鹿げた事あっていい筈がねェ…ッ…!」
マリアから掛けられた言葉にボロボロと涙を
流しながらU・Jは振り返る事もせずに大声
で叫び今の此の状況を認められずにいた。
信じられない、いや信じられる筈も無い。
U・Jはサーガの死に直面し脳内が死にたい
程に熱を帯び灼き切れて行くのを感じる。
「テメェ…言ったよな?誰よりも自由に生きるんだって…生き抜いたって事か…?んなワケねぇだろ…死んじまったらァ…自由もクソもねぇじゃねェかッ………!!」
U・Jはサーガの身体をグッと抱き抱え喉が
痛い程に叫び倒した。
目が痛い程に涙を流した。
静かな山中にU・Jの慟哭だけが痛々しくも
響き渡っておりマリアも耳を塞ぎしゃがんで
しまい胸が張り裂けそうな時の中に居る。
しかし、何故泣いているのか?
自由に生きた結果だと言いたげに凄惨な死を
迎えた筈のサーガの表情は笑顔のままで終焉
を受け入れていた。
其の笑顔がU・Jにとっては一番辛く悲しい
事にも感じてしまっている。
本来なら「良く頑張った」と唯一無二の親友
を褒めて天国へ送り出してやりたい。
其の感情があるからこそ、遣る瀬無い。
此の怒りと慟哭をぶつける場所を此の時の彼
は知らずにいたからだ。
ただひたすら、泣く事しか出来なかった。
月光に照らされるルタイ山の山中でU・Jの
中の何かが静かに壊れて行くのを悟る。
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