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第十一篇第三章 鬩ぎ合う苦悩
羆槍ランスvs舞鷹ヨハネ
しおりを挟む「終わりだ…!」
完全に息の根を止めようとランスの首元へと
レイピアを突き立てるヨハネの動きに合わせ
ランスは目を見開くと身体から溜め込んだ雷
を全身から放電させる。
朱色の電撃を放電させたランスの起死回生の
動きに気圧されたヨハネは背後へと跳んで間
の距離を空けランスを見遣る。
「何が終わりだってぇの…若造が。国王に捧げた俺の槍の強さはこっからが本番だろうが…!」
ランスの放った放電は迅雷のギフトの特性の
一つでもある“蓄電”で、溜め込んだギフトの
チカラを一撃に込めるチャージ能力だ。
「見よや見よやァァ!!王家に轟く天下の一本槍ィ…!知られて名乗るも烏滸がましいがランス・テラモーノの大立ち回りィ…口上奏でて幕開けじゃあッッッ!!!」
まるで歌舞伎役者かの様に手のひらをグッと
前に突き出して口上奏でたランスの姿を見て
相変わらずの冷たい視線を浴びせるヨハネは
静かに身体の奥底から黄金色のオーラを自身
のギフトの風に変換して吹き荒れさせる。
「騒がしさは…天下一品だ…」
「ほざいてろってぇのう!!」
ランスの身体が朱色の雷撃とオーラに依って
姿形を変えて行くにつれて雷撃の重さと威力
が更なるステージへと昇って行く。
「迅雷覚醒…“ 剛羆降雷”ッッッ!!!!」
左腕が羆の爪を宿して肥大し其れに合わせて
身体全体の筋肉が増強され着物の胸元が強化
された身体の大きさに合わせはだける。
そして、顔に歌舞伎役者の様な隈取りを施し
雷に依ってコーティングされ強化された槍を
力強く振り翳して見せた。
「羆か…どう足掻こうとも月を背にして天高く舞う鷹を見上げて吠えるが関の山だ」
「口の達者さもまんま貴族の其れじゃのう…未だに蔓延る格差社会に胡座を掻いた男よ…後悔もしても遅ェってんだってぇのう!!」
「……何を…貴様等が仰ぐ国王が正に其の象徴では無いか…」
「だったら俺等が成し遂げようとする事をよォ…指ィ咥えて見届けて見ろってぇの!!」
力強く大地を蹴り上げ上空へと跳び上がった
ランスが振り翳す槍に朱色の雷撃が迸りつつ
込められて行くと一気に解放する様に其の槍
がヨハネの頭上へと振り下ろされる。
ヨハネはレイピアを振るい黄金の風を盾にし
攻撃を弱らせながら背後へと跳ぼうと考えた
がランスの放った雷撃は簡単に防げる様な物
では無くヨハネは其の一撃を食らってしまう
と身体を痺れさせながら弾き飛ばされた。
「……今のも“蓄電”の特性か…?にしては…強度も威力も段違いだった…」
「冬眠をする生き物だからのう…羆は。“蓄電”っつう特性を最大限に強化出来る貯蓄っつう生態があるんだってぇのう…!」
ヨハネは口元の血を拭いながら冷たい瞳を
ほんの少し尖らせるかの様に鋭く変えて眼前
のランスを睨み付けていた。
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