RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十一篇第二章 標的包囲戦

芽生えた絆

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其の場から立ち去ろうとするノエルは静かに
覚醒を解こうとしながら踵を返す。

そして、倒れたシグマに背を向けて一歩を
踏み出そうとした瞬間に備わった危機感知の
能力が不穏な作動を始める。

確かにシグマは倒れた。

だが、胸の中で鳴り響く危機感知のアラート
にノエルは慌てて振り返る。



「仕留めた筈だ…!」



其処には未だ俯いた儘、身体を震わせて足を
何とか立たせたシグマの姿があった。



「勝手に終わらすなや…ワイは…まだやれんで?」


「害虫並の生命力だ…」


「うっさいねん…ボケがァ…」



シグマの身体に萱草色の嵐が巻き起こる。

そして、其の額に螺旋状の一本角が顕現して
鎧の装飾が変わり首周りに萱草色のファーが
巻かれると槍もまた螺旋状へと変わる。



「疾風覚醒…“ 閃角翔馬グリントユニコーン”…ッッ!!」



シグマが最後のチカラを振り絞って覚醒へと
至ると槍を構えて神速の域に達した速度を
見せ付けながら間合いを詰めた。

そして、槍を突き出すとノエルから見て左側
の翼を貫き其の儘の勢いで身体ごと旋回させ
ノエルを背後へと槍の一撃で吹き飛ばした。



「ホンマ…勝手に終わらされたらたまったモンやあらへん…絶賛考え中やからや…ワイがアイツの為に何が出来んのかをなあ…!」



口から流れた血を拭いながら緩りと足を立て
立ち上がったノエルは疑問符を浮かべる。



「何の話だ…」


「ワイとワイのライバルとの話やァ!!」



言葉と共に精神を激らせ限界を超えるかの様
に駆け出したシグマの身体から螺旋状に吹き
荒れる風がノエルの身体を包んだ。



「絶技… 螺旋槍破・瞬一閃らせんそうは・またたきいっせんッッッッ!!!!」



身を屈めて走り出したシグマが突き出した槍
の先端に合わせて萱草色のユニコーンの姿が
ノエルの視界で重なり合う。

そして、吹き荒れる螺旋状の風に乗りシグマ
はノエルの身体を通過する様に貫くとノエル
の背後で傷口から血を吹き出しながらも緩り
と瞳を開いて縦に槍を振るった。



「答えが出んなら…ひたすら前へと進んでみるっちゅうんがワイの座右の銘や…進んでる間は悩み抜いたるで…アイツの為にホンマにワイが何をしてやれんのかをなァ…」



シグマは振り返らずに此の戦いの決着の幕が
降りた事を確信していた。

其の確信に違わぬ様にノエルが静かに大地へ
其の身を落とし伏して行く。

互いに覚醒が解けて行く。

もはや、限界を迎えていたのだ。

しかし、シグマは其の身体の儘にひたすら前
へと歩みを進めて行く。

時折、辿々しく足を進めてはいたがそれでも
自分の足で地を踏み確かに前へ。



「(心配すんな…ワイもちゃんと生き…とる…で…)」



しかし、シグマも倒れた。

薄れゆく意識の中で仲間の無事を祈りながら
シグマはほんの少し笑みを浮かべた。
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