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第十一篇第二章 標的包囲戦
静寂斬り裂く竜巻
しおりを挟む勃発した四つの迎撃戦の内、三つに決着が
訪れた事で残り一つの戦いに目を向けよう。
残ったのはシグマと少将ノエルの戦い。
ルタイ山の奥地へと入り込んで行ったシグマ
とノエルは草木生い茂る密林地帯に居た。
しかし、其の姿が確認出来るのはシグマ一人
だけで身体には無数の傷が刻まれている。
「ホイホイ、ホイホイ飛び回りおってからにぃ…そろそろまともに勝負せいや!ドアホォォ!!」
密林地帯にシグマの叫び声だけが虚しく響く
理由はノエルのギフトのチカラにあった。
ノエルの授かったギフトは疾風のギフト。
彼の得意特性は“静寂”。
音を消して夜の闇の中に身を潜めるノエルは
時折木の上から自慢の速度を披露しつつ大地
に佇むシグマへと襲い掛かる。
正しく、狩人の戦い方である。
「あっかんわ…どこにおるかもわからへんし…詰んどるやろ…コレ…。せやな…仕方あらへん…やるしかないやろッ!!」
頭上に両手で握った槍を構えるとシグマは
其の槍を最初は緩やかに旋回させ段々と其の
槍の回転速度を上げて行く。
そして、其の旋回された槍を起点に萱草色の
竜巻が巻き起こって行く。
萱草色とはやや赤みのある黄色の事で竜巻は
彼の持つ疾風のギフトに依る物だった。
其の嵐が密林地帯の大木達をざわめかせる様
に揺らし始めどんどんと勢いを加速させる。
「ようやく見えたでッ!!久しぶりやな…こんの豆腐頭がァァ!!」
シグマは槍の先端から突発的な暴風を巻き
起こして漸く発見したノエルに向かい打つ。
其のノエルは身を隠していた大木の枝の上
から飛び降りると攻撃を躱し大地に立つ。
「荒々しい戦い方だ…其れは其れとして豆腐頭とは何だ…?」
「はぁ!?そんなん…あんさんの頭が豆腐みたいに真っ白やと言うとるんやろが」
「…………知能は猿以下か…」
「あァ!?聞こえんなあ…もっぺん言ってもらえまっかァ!?」
「よし…仕留める…!」
手に鉤爪を装着しているノエルは頭の中で何
かがプツンと切れた音を確認するとルタイ山
の大地を蹴り上げシグマへ攻め掛かる。
「はっ…意外と短気なんやないか…豆腐頭のあんさん…はなっからそう来とってくれりゃあ手間入らずやったのになあッ!!」
正面から攻め込んで来たノエルに対して一歩
前へ踏み出したシグマは槍を振り構え一気に
前方へと繰り出して見せた。
シグマの手の鉤爪に込められた白花色の疾風
とシグマの萱草色の疾風がぶつかり合う。
静寂に包まれていた戦場が転機を迎えて突然
の激しさを増す事となった。
「こっからやでッ!?ワイの実力…思い知るんわなあ…!」
「其れはそうだろう。先刻迄…一方的にやられていただけだからな…」
「あァ!?うっさいんじゃボケェ!!」
シグマ・オルフェアス。
煽るのは得意だが煽られる事には耐性の無い
性格の持ち主であった。
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