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第十一篇第二章 標的包囲戦
友の涙
しおりを挟む「驚異的な聴力を持ち…此方の出方を封じる…私の戦闘スタイルが潰されてしまったな」
「此れでも未だ自身を強運と呼べるか?貴公は」
「フフ…其れと此れとは全く別の話だ。奇襲が通じないと言うなら正面からの戦いに興じる迄だ…!」
シャーレは自身の羽を翻し身体を一度旋回
させると其の儘の勢いで低空飛行を始める。
其れに対してドーマンは自身の身体を反射
させシャーレの背後を取る。
しかし、シャーレは自身の羽の盾で其の背後
からの攻撃をいなす様に防ぐと青龍刀の先端
をドーマンへと突き立てる。
「反応速度が研ぎ澄まされている…!」
「攻め方が変わらないのでな…慣れて来たんだよ…!」
「不遜な物言いを…!」
シャーレが薙ぎ払った青龍刀の先端が背後に
いたドーマンの肩口を斬り裂く。
しかし、身体を捻った事でシャーレに出来た
隙を見逃さずに自身が傷を負ってでもと踏み
出したドーマンの一撃もまたシャーレに対し
一太刀を浴びせる結果となった。
正に両者が肉を切らせて骨を断つの精神を
体現した事により正面衝突が起こる。
何方もまた刀傷を増やし血を流して息を荒く
させながらも其の瞳の炎は絶やさない。
そして、此れで決めると言わんばかりに二人
は同時に地面を蹴り上げる。
「(私は強運だ…其の理由はとても簡単だったよ。私には護りたい友が居る…其の友の苦悩も涙も見せつけられた…)」
互いに間合いを詰め切り長刀の先端と青龍刀
の鋒が両者の身体の一部へと触れる。
「(一人で抱え込む事は恐ろしい事だ…私も長屋町の皆にあの孤独と恐怖を打ち明けて救われた…だから知っている。共に寄り添い苦しみを分かち合う仲間、友達が居てこそ…人は次の一歩を恐れずに踏み出せるのだ…!)」
時間がとても緩やかに流れる。
互いに触れ合った刀が静かに二人の身体を
血飛沫を撒き散らしながら貫いて行く。
「(そんな友と出逢えた事…そんな友が私に全てを明かすと決めてくれた事…其の事実を強運と呼ばずに何と呼ぶ?)」
ドーマンの長刀がシャーレを貫きシャーレの
青龍刀がドーマンの身体を貫いた状態で二人
は動きを静かに止めた。
そして、緩やかに両者同時に其の武器を相手
の身体から引き抜く様に背後へと一歩引くと
まるでスプリンクラーかの様に鮮血が山中の
大地に振り撒かれて行く。
「…ッ…見事…!」
「貴方もだよ…ドーマン少将…!」
不思議な愉悦に浸されて二人は笑みを浮かべ
其の儘、背中から地面へと倒れ込んだ。
「(声がもう…出ないな…少し…少しだけ…休もうか?いや…心配を掛ける訳には行かない…な…)」
シャーレは緩り緩りと身体を捻って何とか
うつ伏せの状態に迄自身の肉体を動かす事
には成功したが其れ以上は無理だった。
そんな限界のシャーレの元に静かに足音を
鳴らしながら近寄る一つの人間が居た。
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