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第十一篇第二章 標的包囲戦
義を貫く二人の剣士
しおりを挟むポアラとエルム、此の二人の戦いが決着の刻
を迎えた頃合いに別の場所で二人の剣士同士
の戦いが熾烈な争いの渦中へと入り込む。
次縹色という青ベースの水流を逆巻かせた
青龍刀と金糸雀色という黄ベースの鉄鏡の
チカラを纏わせた長刀が甲高い金属音を奏で
鍔迫り合いの様相を呈す。
「ほう。筋の良い剣捌き…貴公の腕前の高さ…感服致す…!」
「其れはどうも。しかし…貴方の剣筋も中々の物…一筋縄では行かなそうだ…!」
此方ではシャーレとドーマン。
此の二人の対決が秒毎に激しさを増しており
鍔迫り合いを解いても華麗な足捌きを見せる
両者は流れる様に次の攻撃を放つ。
そして、何度か刀同士をぶつかり合わせる
時間が経過し数十手を互いに譲らず打ち込む
中で先に勝機を見出したのはシャーレ。
ドーマンの一撃がシャーレを捉えたかに映る
視界の中でシャーレの身体が水となり溶けて
行くとドーマンは状況をすかさず把握する。
「…水分身…“泡沫”という特性か…」
「御名答だよ…ドーマン少将…!」
ドーマンの隙を突いたシャーレが彼の頭上を
取ると真上から肩付近を狙い青龍刀を力強く
振り下ろして見せる。
しかし、其の状況が一変する。
此方も捉えたかに見えた青龍刀の一撃が眼下
に居た筈のドーマンの身体をすり抜けた。
正確にはドーマンの姿は其処には無かった。
「何だ…何処に消えた…」
「拙者の授かった…鉄鏡のギフトの得意特性は…“反射”…貴公は拙者の鏡像を斬ったという…至極単純な事なのだよ…!」
「しまったッ…!」
言葉と共に背後から現れたドーマンの長刀が
下段から振り上げられ其の剣先が躱し切れず
に居たシャーレの肩口を斬り裂く。
そして、一度背後へ跳んで距離を取る選択を
したドーマンの視界の中でシャーレは片膝を
付きながらドバドバと流れ出る鮮血を片手で
抑え込む様に肩を押さえる。
「想定よりも深く抉れた様だな…此処等が潮時と捉えるのも無理な選択では無かろう」
「フフ…此処で私が退くとでも?」
痩せ我慢なのが見え見えの笑みを浮かべて
立ち上がるシャーレを見てドーマンは溜め息
を漏らして鋭く睨み付ける。
「拙者達の追う人間達の中に…どの程度の関係性を育んで来たのかは理解し兼ねるが…今、貴公が護ろうとしているのは政府に楯突く人間達で有る可能性が高い…何故、自身迄もが罪を犯す選択肢を取るのだ?」
「ロード・ヘヴンリー…という名を知っているだろう…?」
「ああ。まさか光の街セイントピアで辻斬りの汚名を着せてしまった彼が…また新たな疑いを掛けられるとはな…拙者は改めて彼の前に立ち問い質さねばならぬ様だ…!」
「ロードは私の友だ…。憶測だけで友を追う貴方達の前に其の友を…引き渡す訳には行かない…充分だ…政府すら敵に回そうとも…私が戦う理由としてはな…!」
覚悟の青龍刀を再び握り締めシャーレの体勢
は改めて抗戦の構えを取るのだった。
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