RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十一篇第二章 標的包囲戦

愛で包まれる世界

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「かわいいっ!ポアラちゃんは妖精さんなんだねっ」


「…ありがとっ。でもっ…女の子は可愛いだけじゃいられないのっ!!」



覚醒したポアラが思い切り腕を引いて真下の
地面をエメラルドの拳で殴った。

すると地割れが引き起こされエルムの足元迄
易々と崩れて行くのだが其処の割れた地面に
重力の特性も付与されていた。

バランスを崩したエルムは其の儘、重力の
チカラを受けてしまい足の裏と割れた大地が
離れなくなってしまった。

其の瞬間だった。

ポアラは一気に空中へ跳ぶと真っ直ぐに眼前
のエルムを捉え再度、腕を引く。



「吹っ飛べェェ!!!!」



高らかに叫んだ声と共にポアラはエルムへと
引いた拳を一直線に前へ出す。

しかし、エルムは動きの制限を受けていない
腕を使ってステッキでハートマークを描くと
其処に雪の盾が顕現される。

其の雪の盾はポアラの拳を呑み込むかの様に
受け止めて攻撃速度を減速させる。



「しまったっ…」


「ぬけないでしょ~?次はエルムちゃんの出番だよっ!!」



エルムは更にステッキを波打つ様に振って
見せるとポアラを囲んで三百六十度全てを
支配する様に蒲公英色のペンギンを出す。

そして、其のペンギン達を一気に振り下ろす
ステッキの動きに合わせてポアラへ向かって
襲い掛からせて見せた。

ポアラは身体の周りに円形の翠色の重力の壁
を何とか作り上げてペンギンの群れの総攻撃
を弱らせて見せるが全ては躱し切れない。

更なる痛手を負ったポアラは最後の最後で壁
を打ち破られエルム側から飛んで来た一頭の
ペンギンの直撃を受けてしまう。

背中から地に倒れ込んだポアラは痛む身体を
何とか引き起こしてエルムを見遣る。

しかし、其の身体は既にボロボロだった。



「まだ戦うんだっ?ボロボロなのに…」


「もっちろん…っ…!」


「そっか…。真っ直ぐだねっ…お友達の事を好きだからこそ…立ち上がれるんだ…でも。エルムちゃんも…みんなの笑顔を守りたいからッ!!」



エルムはステッキを高々と天に向かって翳す
と淡雪の特性を持った吹雪が周り一帯を支配
する様に吹き荒ぶ。

そして、エルムの背後に巨大な氷のペンギン
が形作られポアラを見下ろす。

ポアラの身体は淡雪の特性に依って身動きを
取れなくなってしまっていた。



「絶技… 氷魔創・沈黙乃嘴ひょうまそう・ちんもくのくちばしッッ!!」



エルムの背後に顕現したペンギンの嘴が吹雪
の中を素早く潜り込む様にポアラを頭上から
封じ込める様に襲い掛かる。

身動きの取れないポアラは回避する術を持ち
得ずにエルムの絶技に依って大地の上で静か
に臥してしまうのだった。



「ポアラちゃんっ…ごめんねっ。エルムちゃんにも帝国軍で叶えたい想いがあるのっ。みんなが笑顔で幸せに暮らせる愛でいっぱいの世界っ…だから…今回の任務からは逃げちゃいけないんだっ!」



エルムは胸を痛めながら動かなくなっている
ポアラを見遣り背中を向けて歩き出す。




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