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第十一篇第二章 標的包囲戦
迫り来る帝国の脅威
しおりを挟むロードの両親の話題と六撰将の成り立ち等の
話が一段落着いた頃にM・S・システムズの
最上階にけたたましく緊急連絡音が鳴る。
椅子に腰掛けていたマルクはテーブルの上に
置かれた無線機の受話器を手に取ると静かに
耳に当て其の内容を頭に入れ始める。
緊急連絡音が鳴るのと同時に静寂に包まれた
最上階の一室は次のマルクの行動を待った。
そして、緩りと受話器を置いたマルクはふう
と息を吐くと立ち上がり声を発する。
「緊急事態だよ…此の本社ビル周辺が帝国軍に包囲されているみたいだ」
マルクの声に一同は緊張感を高めるかの様に
表情を曇らせるとシルクハットを被り直した
マルクは椅子から離れる様に歩く。
「何処かで僕達はマークされていた上にロード君達の合流が遅れた事で対策を打つ時間を与えてしまった様だね…」
「此のビルの中に突入して来るってーのか?帝国軍の奴等は…」
「いや、其れは無いね。政府は水面下でウチの会社との提携を持ち掛けて来てる…未だ此の国の発展レベルを見ればウチを潰そうと考えるのは可能性が低いのさ」
ランスの問い掛けに冷静に答えたマルクは窓
の外を眺めると踵を返して入り口へ向かう。
「でも、隠れ家は変える時が来たみたいだね。リア、鳳凰殿に向かうのが最適と考えるけどどうかな?」
「ええ。此の本町から北のルタイ山に抜けましょう…そしてイヴァンリスの長城を越えれば祈りの街メイデンセイスの最南端に出ます…鳳凰殿へ向かうのは…私も最適解かと考えます」
入り口へ向かっていたマルクはリアからの
返答を聞き終えるとランスを一瞥する。
「悪くないのう…マルク…先導を頼んだぞ」
「オーケー。そしたら従業員用エレベーターでビルの北口へと出る。其処は通常の出入り口とは違うから…未だ帝国軍は張っていない…けどね?言ったと思うけど…彼等は僕等の行動を読む対策の時間があった…恐らく読まれてるよ?僕達の行動は」
「しゃらくせぇ…読まれてんなら力付くで突破していくだけだ…!」
「言うと思ったよ。さあ、行こう!」
慌てて立ち上がったロード達と六撰将の面々
はマルクの先導でM・S・システムズの北口
へと出るエレベーターを目指してビルの中を
足を早めて駆け巡る。
ネオンに照らされた街の夜空に浮かび上がる
満月の光が射し込む雷の街ヴォルテークの北
に生い茂る闇夜の密林ルタイ山から更に北に
ある街と街の境界線を指し示すイヴァンリス
の長城を一旦のゴールラインと決めてロード
達は迫り来る帝国軍からの撤退戦を始めた。
しかし、マルクの言葉通り背後に迫る帝国軍
は彼等の行動を一瞬で察知した。
やはり、読まれていたのだろう。
ビル内には政府も欲する技術力が結集されて
いた事で帝国軍としても屋外での決戦は望む
所と言うべきか。
vs帝国軍の包囲戦が開戦を告げる。
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