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第十篇第五章 反乱と革命のフィナーレ
『Ice crystals falling to the ground』
しおりを挟む帝国軍参戦の報は、直ぐ様両軍の耳へと飛び
込んで来ておりエルヴィスとノア、此の二人
のトップから正式に戦線離脱の命が下る。
ロード達もまた此の戦場からの離脱を図る様
に地を駆けて行くのだった。
しかし、たった一人だけ此の戦場からの離脱
を拒むかの様に立ち尽くし眼前に迫る帝国軍
の乱入者と視線を交わらせる。
「あら…貴女は逃げなくて良くて?」
声を掛けたのは小紫色の羽織を纏った金髪
ロングの帝国軍の女性であった。
頭にカチューシャを挿した其の女性を見て
声を掛けられた空色の髪の女性は静かに声を
上げて帝国軍の女性の名を呼ぶ。
「はぁ…まさか…帝国軍の大将が此処迄来てるなんて驚きよ…ララ・スターハート…!」
国王直下帝国軍大将ララ・スターハート。
帝国軍に三人しか存在し得ない軍の最高戦力
とも称される強者がシルヴァからの情報を元
に反乱軍、革命軍、両軍の拿捕へと動き出す
迄の流れとなってしまっていた。
「中々、捕らえるという結果に繋がって来なかった貴女達だったけど…正に、此れは運命ね…。全戦力が疲弊しているなんて…ねぇ?貴女もそう思わない?アドリー・エイテッド…!」
大将ララからの言葉にアドリーは痛む身体に
手を当てながら唇を噛む。
離脱を図る事をアドリーも考えた。
しかし氷の街でノエルとの激闘の中で受けた
傷を庇いながらティアと戦闘を繰り広げた事
でアドリーの身体は今も尚、立っている事が
奇跡と呼べるくらいの状態だった。
だからこそ、殿を務める事を誓った。
全ては仲間達の離脱を手助けする為に。
自身が“犠牲”になる事を厭わずに敢えてララ
という圧倒的戦力の前へと足を伸ばして立ち
塞がる事を決意したのだ。
アドリーにとっては、此のちょっとした会話
すら皆が離脱する迄の時間稼ぎとして必要な
事と捉えていたのかもしれない。
「(エルヴィス…そして、ノア…仲間達をお願いね…!私は私に今出来る事をやるから…!)」
最後のチカラを振り絞りアドリーは大将ララ
に向かって空色の矢を乱発する。
しかし、大将ララは眉すら動かず其の攻撃を
完封して見せるとアドリーの首元に緩りと手
を伸ばして行くのだった。
空が震えた様な気がする。
何の前触れも無く戦場から離脱を図っていた
エルヴィス、ノア、ティア、此の三人だけが
背後を振り返ると今得た感覚を不思議に思い
不安を掻き立てる。
だが、此の事実は未だ誰も知り得ぬ物として
風に掻き消されてしまって行く。
こうして、十年もの刻を経て決着の場を求め
集い奏でられた反乱と革命の最終楽章の楽譜
が静かに閉じられて行く。
其々の想いが交錯し奏でられた此の音色は時
に天候すら支配してしまう程のフィナーレを
迎える事となったのだが、最後に残された種
が一つ、不穏な未来を映し出していた。
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