RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十篇第四章 反乱と革命のフェローチェ

星涙ティアvs凛雨アドリー

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激痛の走る身体に表情を歪ませながらも
反乱軍アドリーは空色の氷を手のひらから
精製して高さのある櫓を造り出す。

アドリーは其の上へと登り櫓の欄干から弓を
眼下に構えるとまるで氷の矢の雨を降らせる
かの如くティアに向けて放つ。

ティアは撫子色の激流を旋回させた三叉槍の
動きに合わせて斜め上空へと放つと降り頻る
氷の矢の雨を一掃する。

更に振り戻した三叉槍を背中を通して持ち手
を変えると膝を折りながら今度は櫓の下層の
部分へ水流の斬撃を飛ばした。

其れに因って瓦解した櫓は氷塊へと戻り始め
アドリーは其の氷塊を蹴り伝ってはティアの
待つ眼下へと勢い良く跳び降りた。

互いの戦いに言葉は無い。

言葉を躱す程、辛さが増すのをお互いが理解
しているからの光景なのだろう。

地面へと降り立ったアドリーは右手を伸ばす
と其処から造形された氷の鎖が放たれティア
の腕を捉え互いの手首を繋ぐ。

そして鎖を引っ張るとティアの体勢がほんの
一瞬前方に傾きよろけるのを確認した。

アドリーは此処で鎖を離し一瞬で氷の矢を
精製し瞬く間に其れを弓を引き放つ。

ティアは紙一重で躱すもアドリーの次なる
一手は始まりを迎えていた。



「絶技…“ 氷雨空時雨ひさめそらしぐれ”………」



アドリーが天に振り翳した弓の先から空に
巨大な魔法陣が描かれる。

そして、アドリーは弓を天から地へと振り
下ろすのを合図にまるで雨の如く幾つもの
氷の矢が降り注いだ。

ティアは焦りを見せながら上空に向かって
三叉槍を突き上げると激流の水弾を創り上げ
矢が降り注ぐ空へと放つ。

だが、矢の勢いは留まる事を知らずに水弾
すら射抜きアドリーの絶技がティアに更なる
追い討ちの雨を降らせるのだった。

ティアは数本の矢を浴び血飛沫を舞わせるが
此処で漸くティアの流水のギフトの得意特性
“泡沫”が発動して其処から姿を消した。

アドリーは左右前後を慌てて確認するが眼前
から消えたティアの姿は確認出来ない。



「ティア…何処へ行ったの?」



戦場に呆然と立ち尽くすアドリーの姿を岩陰
から覗き込んでいたティアは出来る限りの
波動を抑え込み一度息を潜ませる。

其の肩からは“泡沫”発動前に浴びてしまった
アドリーの攻撃の傷が残っていた。

手のひらで血を抑えながら荒れた息を整えて
反撃の機会を探していたティアだったが視界
に捉えていたアドリーを見て違和感を感じて
しまっている。



「(アドリー…貴女…何か大きな傷を負いながら戦いに来たのですか…?)」



攻めを続けていたアドリーなのだが時折何か
痛みに表情を歪ませる姿を確認していた様に
今も肩口を抑え多量の汗を流している。

ティアはアドリーを心配しながらも戦いに
戻るか否かの選択を迫られる。

親友同士にとっての戦いに更なる絶望的な
感情戦迄もが入り込んで来てしまった。

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