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第十篇第三章 反乱と革命のストリンジェンド
託される想い
しおりを挟む「……負け…か…」
鉄鋼区域の地面へと沈んだ革命軍アレンは
ポツリと言葉を呟きながらエルヴィスの眼下
で動かぬ身体に負けを自覚する。
アレンの脳内に過去の記憶が流れ込む。
アレンの産まれた村は戦争の真っ只中に位置
し日々、死の恐怖を感じながら生きる運命の
渦の中に放り込まれていた。
アレンは家族だけでなく、友人や友人家族と
言った村の人間達が日に日に其の姿を消して
人生から突然に決別されるのを見て来た。
此の時代に弱き人間には希望は無い。
幼いながらに呆然と哀しき答えを手にして
しまった少年の世界は常に灰色だった。
だが、そんな少年の世界を塗り替える事と
なる一人の男性との出逢いが待っていた。
其の男性こそが当時、此の時代を変えるべく
水面下で動き始めていたノア・クオンタムを
トップとした独立師団革命軍の母体だった。
『此の時代に絶望を感じて居るのなら…動かずに諦めるな。私…いや、俺と共に来い…自分達の力で此の時代に革命を起こすんだ…』
其れが英雄と慕うノアから掛けられた初めて
の言葉であり時代に絶望した少年を此の時迄
這い上がらせた運命の出逢いと言葉だったと
アレンは永劫忘れる事は無いだろう。
今でも胸の内に収め事あるごとに思い返して
自身の生きる希望と銘を打つ。
アレンがノアを慕い、ノアの為に人生を賭け
彼の歩む道を拓いて行こうと考えたアレンに
とっての尊敬と戦いのルーツ。
其の想いから、気を失う前に一言だけ眼前の
エルヴィスの耳にも届いた言葉がアレンの口
から静かに零れ落ちた。
「ノア…さ…ん…。ごめんなさい…俺…負けちまった…でも…ノア…さんは…負けちゃ…ダメだ…貴方は…俺にとってだけの…英雄で終わる男じゃ…ないん…だからさ…!」
そうして、アレンの身体から力が抜け意識は
無物の空間へと誘われ途切れて行った。
其の言葉を聞いてしまったエルヴィスは自身
の鼓動がどんどんと早くなって行くのを感じ
落ち着ける様に空を見上げた。
空に少しずつ雲が流れて行くのを見た途端に
戦いの持つ恐怖と絶望を再認識する。
そして、無言のままにアレンに背を向けると
静かに瞳を閉じたまま其の場から去って行く
様に足を進め始めて行くのだった。
「(アレン・ノーザンか…俺は止まれない…ノアを此の手で…。其の結果が訪れちまったら…俺の事は許さなくていいッ…!)」
覚悟と共に目を見開き刀を鞘に納めると拳を
グッと握り締めて歩むスピードを加速させる
エルヴィスをまるで追い掛けるかの様に空に
流れる雲が其の動きを迅めて行く。
賽は投げられた。
いや、投げられてしまったのだ。
決着が付く其の瞬間迄、潰れそうな自身の胸
の内に押し込む様に本心をひた隠して反乱軍
総長エルヴィス・ハワードは修羅を征く。
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