RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十篇第二章 反乱と革命のグラツィオーソ

亡き師匠の為に

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「エゼルよ…良くぞ戦った…!」



決着と共に聞こえて来た低音の声にヴィスタ
慌てて声の主を目で探す。

そして、其の声の主を視界に捉えた次の一瞬
に思わぬ一撃がヴィスタの腹部を襲う。

下方からアッパーの様に振り上げられた腕に
は鋼鉄仕様の手甲が握られ其の破壊力は自身
が想像し得る拳の一撃を遥かに凌駕する。



「ゆ、ユーは…!」



不意打ちの様に浴びせられた重たい一撃に彼
の内臓の何処かが損傷したのだろう。

赤黒い血反吐が地面に重たく溢れ落ちる。



「我が名は…反乱軍幹部…ゼロ・アンダーブレイズ…!安らかに眠れ…革命の使徒よ」



ゼロと名乗った筋骨隆々のガタイに坊主頭。

其の坊主頭には黒い手拭いを巻いた男は地面
に這いつくばるヴィスタを見遣り包帯を巻き
数珠を手にした両手を合わせて静かに其の瞳
を閉じ、何かを祈る様に黙する。



「(ハハッ…バトルに卑怯も何もナッシングだよね…油断したミーの落ち度さ…ソーリー…お師匠様…でも必ず成し遂げるさ…ユーみたいな人が生まれない…ジェネレーションの為に…!)」



ヴィスタの意識が薄れ行く中、彼の脳裏に
浮かんだのは若かりし頃、孤児として戦禍を
経験した彼を育てた恩人の姿。

ヴィスタの師匠は槍術の使い手であった。

錫杖を使う彼の戦闘スタイルのヒントは正に
其処から生み出されたモノである。

親を亡くしたヴィスタの面倒を見ていた其の
師匠は彼の親戚等では無かった。

もっと言えば面識が合った訳でも無い。

巡り合わせと言えば其れ迄なのだが師匠から
すれば家族が死に一人ぼっちだったヴィスタ
の境遇と自身の境遇を重ねたのだろう。

師匠は当時で既に五十を超えていた。

だが、彼にも身寄りが無かったのだ。

其れも其の筈で彼の師匠はプレジアの生まれ
では無かったからであり其の当時での数年前
に戦争で訪れ残留兵となってしまった男だ。

師匠もヴィスタも一人ぼっちだったからこそ
共に寄り添い合ったのだろう。

だが、師匠の存在に帝国軍が気付く時が彼等
の前に残酷にも訪れてしまった。

処刑、されたのだ。

其処でヴィスタは師匠がバルモアという国の
戦争兵で在り此の国の敵だと言う事を知る。

しかし、受けた恩に理由等無い。

ヴィスタにとっては師匠が居なければ今の
自分は存在すらしない事を悟り、運命の巡り
合わせだった革命軍との出逢いで志を共鳴
させる事となった。

師匠譲りの槍術に師匠譲りの明るさ。



『辛いと思う事こそ最大のマイナスに掛かるマインドコントロールで在る…ピンチと捉えるもチャンスと捉えるも己次第。じゃが、忘れるでない…“笑顔”こそ人間が持つ最高のスキルで在り、武器で在ると…!』



ヴィスタは其の言葉をなぞる様に反乱軍幹部
ゼロ・アンダーブレイズの前に力尽きた。

革命軍幹部ヴィスタ、戦線離脱。
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