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第十篇第二章 反乱と革命のグラツィオーソ
人魚の様に流麗に
しおりを挟むティアはリズの動きに不可思議な点が在る事
を早くも見つけ出していた。
其れは長く伸びた紺青色の水の道の流れの中
に魚影の様に人魚の影が複数忍ばされていた
事であり其の不可思議な点の正体をティアは
直感で感じ取る事に成功した。
其の考えが正しいなら眼前に迫る小太刀を
強く握り締めた覚醒姿のリズは囮である。
其れを見越した様にリズを三叉槍から放った
水撃をヒットさせると同時に膝を一気に曲げ
三叉槍を戻して構え直すと次点に備える。
其の選択は正しかった。
姿を見せていたリズは流水のギフトの特性の
一つである“泡沫”に因る水分身のブラフ。
本命は水の中に潜っていた魚影の方。
背後から姿を現したリズの本体に向けて足を
回転させて三叉槍を振るうとリズは驚いた様
な表情を浮かべて其れを回避する。
「えーっ?そんなにおっきいのぶら下げてるのに小回り効くのは意外過ぎるよっ?フワパイさーんっ!」
「……ティアですよ?わたくしの名前は…」
フワパイの呼称を訂正しようとしたティアの
想いなどお構い無しにリズは改めて水の道を
素早く遊泳し隙を伺い始める。
だが、リズから見てもティアに隙は無い。
「んーっ…フワパイさんって…見た目的にはおっとりしてそうなのに…強い人なんだ?しかたないから…全力で決めちゃおうっ!」
リズはグッと表情を固めると発現させていた
水の道をティア一人に向けて一本道と成る様
に修正を始めて行った。
すると其の水の道に幾つもの魔法陣の輪っか
が取り付けられる様に創り上げられる。
「絶技…麗渦・水游陣…!!」
リズはティアよりも高い位置へと浮上する様
に尾鰭を動かして行き、距離を保つとまるで
ウォータースライダーを降るかの様に頭の先
を先頭に水の道を下りて行く。
そして、複数の魔法陣を潜り抜ける毎にリズ
の速度は段々と加速し流麗且つ耽美に游ぐ様
にティアへと迫り小太刀を強く振るう。
其の速度に未だ其の位置から動きを見せない
ティアを見てリズは自身の絶技の直撃を確信
したが、其の未来は訪れなかった。
「えーっ?…まさかの空振りっ?」
リズの絶技が不発に終わると彼女の背後に
ティアが緩りと姿を現して一歩前に進むのと
同時に三叉槍を振り上げ、そのまま地面に
向けて真下に振り下ろした。
其れと同時にリズの上空からまるで流星群の
様に撫子色の水撃が幾つも重なって降り注ぐ
とリズは其の水撃の群れに呑まれて行く。
「始めに…貴女の攻撃が“泡沫”を用いての物だと気付いたのも…わたくし自身も全く同じ得意特性だからでした…。今のもそう…ギリギリまで引き付けて…“泡沫”で撹乱…ほんのちょっとだけ、わたくしの方が上手だったのかもしれませんね…!」
振り返ると同時に背中から鉄鋼区域の地面に
倒れ込んだリズの姿をティアは見遣った。
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