RISING 〜夜明けの唄〜

第九篇第三章 ポルナダベトルの戦い

戦鬼 ガルフ・ジャッククォーツ

「えっ…なにが起きたの今っ…？」


「解らない…唯一つ理解した。元帝国軍大将にして“戦場の鬼”と謳われた伝説は今も尚…健在だと言う事が…！」



シャーレとポアラはやっと言葉を形にする事
が出来、息苦しさから解放される。



「テ、テメェ…ッ！！何してくれてんだ…殺してやるッ…殺してやるッ！！！！」



裏帝軍アノンは氷付けとなった自身の状態を
把握すると怒髪天を衝く、とばかりに怒りで
其の口調を荒々しく変貌させる。



「殺してやる…か。そいつが叶わねぇから…お前は今…其処で動けなくなってんだろうが。しゃらくせぇヤツだ…」



ガルフの放った正論を最大限の煽りと捉えた
裏帝軍アノンは怒りを更に増して気合いだけ
で氷晶から抜け出そうとする。

そして、波動とギフトが流れ出す。



「鉄鏡覚醒…“鋼鎧顎鰐アーマーリゲート”…！！！！」



左腕が鰐の口に変化し、氷晶を叩き割ると
生やした尻尾で砕けた氷晶を礫の様にガルフ
へと弾き飛ばして見せた。

だが、其れも少ない歩数で見切り、躱し切る
とガルフは黒道を蹴り脇に刀を仕舞い込んで
空中のアノンを目掛けて跳ぶ。

そして、互いの身体が正面から衝突しそうな
刹那にガルフは身を捻り斜め上に刀を振って
アノンを攻撃するが覚醒した左腕の鰐の口を
盾として何とか耐えようとする。

しかし、及ばなかった。

ガルフはそのまま刀を振り切るとアノンの盾
ごと斬り裂き、背後へと吹き飛ばす。



「迅雷覚醒…“雷瞬蜂針サンダーホーネット”…！」


「疾風覚醒…“舞踊艶蝶ダンシングバタフライ”…！！」



裏帝軍の女性幹部二名が蜂がモデルの羽と
蝶がモデルの羽をはためかせてガルフの背後
から急襲を掛けて来た。

ライアは眠気を誘う蝶の鱗粉を撒き散らして
更には鉄扇から梅重色(紅い梅の花の様な
桃色)の鎌鼬を巻き起こす。

エマは四本に増えた腕で空中を掻く様に飛行
し麻痺毒を持った左腕の針で攻め立てる。

見切りを付け躱しに掛かろうとしたガルフは
左足が動かない事を察していた。

其の理由は左足に巻き付いた鞭の様な蛇。



「大地覚醒…“毒睨豪蛇ポイズンコブラ”……！」



覚醒したスネイクの蛇により足止めを喰らう
中で覚醒したライアとエマが迫り来る。

更には吹き飛ばした筈のアノンが想像よりも
早く戦線へと復帰してきた。

四方から迫る裏帝軍の魔の手にガルフは小声
で一言呟くと刀の鋒を黒道に突き刺す。



「しゃらくせぇ…お前等は未だ…領域外なんだよ…」



突き刺された鋒から多量の波動とギフトが
流れ込み絶大な威力を誇る黒き氷焦が四方へ
異様な速度で拡がって行く。

其の氷焦は氷付けにするモノでは無く完全に
裏帝軍全員に傷を与え突き飛ばすモノ。

ロード達の開いた口が塞がらない。

覚醒した四人の幹部相手に覚醒すら使わずに
完封したガルフ・ジャッククォーツ。

正しく、戦場の鬼と謳われる男であった。