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第九編第二章 真実の声
内に秘めた心の書簡
しおりを挟むそして、次の一瞬に驚きの瞬間が起こる。
不安そうな表情を浮かべていたロードを何と
シャーレが力一杯ぶん殴ったのだ。
「…えっ?シャーレ…アンタ、何してんのッ!?」
殴り飛ばされて地面に転がったロードの肩を
支える様に慌ててポアラが駆け寄る。
そして、感情的になっていたロードは突然の
シャーレの一髪に感情が纏められない。
そんなロードを見下ろしながらシャーレが
珍しく荒げた声を発し始めた。
「お前…私を…私達を何だと思ってたんだッ!!?」
其れはロードもポアラも驚く程の声量であり
シャーレ自身も珍しく肩を震わせ荒い息遣い
で地に座り込んだロードを睨み付ける。
「…シャーレ…?」
ポアラが呟いた其の直後にロードを殴った
シャーレの感情が改めて爆発する。
「真実を知ったぐらいで…私達がお前を切り捨てるとでも思ったのか…ッ…おかしい事を言うのも大概にしろッ!!」
「…なんなんだよッ…だったら…どう思えってんだ…」
「お前には言えない事情があった…だが…何か隠している事がある事ぐらい私達が気付いて無いとでも思っていたのかッ!?不明瞭な想いはあれど…誰一人…お前を急かす真似はしなかった…!」
シャーレの表情がどんどんと苦しそうに変化
して行く事が尚更ロードの心を痛める。
「仲間とは何だッ!?こうやって辛い時に寄り添えるのが仲間だろうッ!?其れを切り捨てるッ!?そんなの仲間じゃない…其れに…ロード・ケーニッヒは王子かもしれないが…私達が好きで共にいたのはありのままのロード・ヘヴンリー…お前だろうッ!?」
シャーレの言葉にロードの目頭に突如として
熱いモノが込み上げて来るのが解った。
だが、其れはロードだけでは無かった。
肩を支えるポアラの目にも荒ぶる感情を曝け
出すシャーレの目にも込み上げている。
そして、静かに近付いたシャーレがロードに
向かって緩りと手を伸ばして見せた。
「なあ、ロード。旅を共にする仲間である以前に…私達は…“友達”だろう…?」
“友達”。
言葉にすれば簡単なモノでも其の存在を確か
なモノとして創り上げるのは容易じゃない。
だからこそ嬉しかった。
だからこそ、“涙”が流れた。
人前で泣くのはいつ以来だろう。
ロードはシャーレの手を取ると力強く同じ様
に涙を流しながら引っ張り上げるシャーレと
顔を合わせ、今度は二人して涙を拭うポアラ
に手を伸ばして引っ張り上げる。
手を繋いだまま輪になった状態でロードが
声を震わせながら口を開いた。
「ホントはよ…こうやって…言葉で…言いたかったんだ…誰か…知ってほしくて…一人じゃ辛くて…!!」
「えへへっ…そのための“仲間”や“友達”でしょっ?ロード…!」
ポアラの言葉がトドメとなった。
知らず知らずにセーブしたままのロードの
涙腺は完全に崩壊し二人に寄りかかりながら
感情の趣くままに涙を流して行った。
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