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第九編第二章 真実の声
二振りの最上大業物
しおりを挟む「童…其の刀ちょいと見せてみろ」
「ん?あ、ああ」
フェレーロに促されてロードは背中に担いだ
刀を鞘ごと抜き取り手渡す。
すると、フェレーロは真横に向けた鞘から
緩りと刀の身を三分の一程抜き出し様々な
角度から眺め始めた。
「まさか…また御目に掛かれるたぁな…何年も所在不明だった此の刀に…じゃとすると御主が…ヤツの息子じゃな」
「まあ。本人からは中々話せねぇ事情があるんですが…ね。其の刀を見たらフェレーロ殿には隠せませんな…」
「ほうほう。なら詮索はよしとくべきじゃの。最上大業物の一振り…鳳炎か…ヤツの兄が据えていた頃に序列を上げた真紅の一振り…」
刀鍛治職人フェレーロとガルフの会話の内容
に半分程付いて行けずに両者の顔をチラチラ
と交互に見る様に首を動かすロード。
すると、フェレーロが二振りの刀をテーブル
の上に置いて二人に向けて口を開く。
「ガルフ…鬼輝夜を打ち直すついでに童の持つ此の刀…鳳炎も預けちゃあくれねぇか?」
「ロード…光栄な事だぞ。腕は此の国に於いても最高の鍛治職人だ…預けていいか?」
「いいんすかッ!?ありがてぇ…!」
「だそうです。お任せ致します…フェレーロ殿」
「あいわかった。時間潰し取れ」
そう言い残すとフェレーロは二振りの刀を手
に小屋の奥の熱気漂う竈門の辺りへと向かい
仕事モードとばかりに捻り鉢巻を巻く。
其の姿を見たガルフはロードを連れて一度
小屋の外へと歩み出して行った。
「なあ、ガルフさん」
「何だ…?」
「さっきまで追われてたのに…なんで今になって刀の打ち直しをしてんだ?」
「政府が明確な圧力を持って今、儂等を探し始めたのが解った…どうしたって戦いは避けられそうにねぇ…だからこそ、今なんだよ。侍にとったら…刀は自身の命運を共にする相棒同然だろ?」
「相棒…」
「人間が疲れたら温泉に浸かって身体を癒すのと同様に…刀も熱い火に当てて真新しい気持ちにさせてやんねぇとな…」
ガルフは静かに空を見上げる。
其の眼差しは近々に迫り来る大規模な戦いを
予感させる様に未来を見据えている。
同じ様にロードも空を見上げるといつもの雲
がより迅く空を駆けている気がした。
するとガルフの懐に忍ばされていた無線機の
音が鳴り響くと機械には滅法弱いとばかりに
ガルフは其の無線機を睨み付けながら何とか
応答に成功する。
一度ロードから静かに距離を置いたガルフは
無線機から流れる声に耳を傾けていた。
そして、話が終わったのか無線機を仕舞って
またしてもロードに近付いて来る。
「ロード…こっちに来い」
「また、いきなりだな。アンタは…!」
「お前は言葉を尽くせ…訊いた話だが、今回の件で御仲間達も不安だろうからな…」
「…それって…」
ロードは黙り込んだガルフの背を追った。
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