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第九編第一章 流浪人の帰郷
ガルフvsアルマ
しおりを挟む覚醒状態のアルマがまたしても溶岩流の黒道
の地面を蹴って宙へと高々と跳躍する。
背骨から身体を反り上げる様に空気を一気に
吸い込んだアルマの口から再度白きマグマへ
と変貌を遂げる咆哮が音波として放たれる。
此れこそが原作国王直下帝国軍の中将として
名を馳せる吼猿アルマ・エルクラウド中将の
真骨頂となる攻撃だった。
其の攻撃に反応したガルフは腰の位置に構え
を取っていた黒刀をスッと頭上へと振り上げ
ると黒き氷雪のギフトのチカラを放つ。
宙でぶつかり合う白き業火の咆哮と黒き氷雪
の斬撃が凄まじく苛烈な衝突劇。
だが、実力は伯仲とは行かず元大将ガルフの
ギフトの練度が上回るかの様に白きマグマの
咆哮は黒き氷晶となって凍り付く。
「それだけの実力があって…ガルフ殿…アンタは何の正義を貫こうってんですかい…?」
「結末はいつも突然に姿を見せる…儂から言える事は今はねぇ…!」
「いつからそんなに隠し事が好きになったんだ…アンタはァ!!」
宙で凍結した氷晶を自身のトンファーの一撃
で破砕させたアルマは地上のガルフ目掛けて
其の勢いのままに急降下して行く。
そして、熱傷の特性を付与したトンファーで
クロスチョップの様な形でガルフを狙う。
憧れと失望の両極地な想いを抱く中将アルマ
の表情は悔しさ等も含んだ様な物に見えた。
其の表情にガルフを唇を噛む。
後悔が無かった訳ではなく帝国軍時代に自身
を目標として慕う者の存在は自惚れでは無く
確かに感じていた事実だった。
そしてとある一件でガルフは立ち位置を変化
させる事になったが理由の説明は其の当時も
今も出来る状況に無かった。
ましてや目の前に迫るのは愛弟子の一人とも
言える中将アルマ・エルクラウド。
其処に何も感じない人間に憧れを抱き慕う者
等いる筈もなくガルフの人間性の高さも見え
隠れする此の戦い。
両者の心が軋んだ音を立てているのは隠して
置くには目立ち過ぎる感情だった。
だが、ガルフには何を言われどんなに失望を
させてしまったとしても今此の立場で成して
置かねばならない優先事項がある。
痛む心をソッと身体の奥底へと仕舞い込んで
瞳を戦場の鬼へと無理矢理に引き戻した。
「(しゃらくせぇ…と言いてぇ所だが…すまんな…アルマよ。じゃが儂も今は…退く訳には行かねェ!!)」
決意を込めた上段からの振り下ろしを見せた
ガルフの剣撃がトンファーを交差させて迫る
アルマのトンファーとぶつかり合う。
「(はっ…やっぱりガルフ殿…アンタはいつになってもどんな時でも…カッコいいなあ…憧れてる間は超えるなんて出来やしないんですかね…チクショウ…!!)」
決着の時を迎えるかの様に黝色の氷晶が空中
から迫り来たアルマの身体を凍結させて行く
と緩りと覚醒状態が解かれ始めて行った。
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