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第九編第一章 流浪人の帰郷
憧れと失望
しおりを挟む大声を張り上げた中将アルマはガルフからの
返答等待つ事は無いとばかりに猛スピードで
溶岩流の黒道を駆け上がると強く振り上げた
右手のトンファーで高い位置から攻め込む。
ガルフは一歩だけ背後へとステップをすると
アルマの攻撃に完全に見切りを付けて躱す。
だが、其の一撃はまたしても溶岩流の黒道に
容赦無くヒビ割れを起こさせる程に凄まじい
攻撃であった。
大きく頭を振り下げて一撃を放ったアルマの
次の攻めは直ぐ直後に訪れる。
首を一気に上げて口を大きく開くと獣人化と
なり鋭い牙が見える位置から声を音波として
発生させ近距離からガルフを狙い撃つ。
だが、ガルフは其の攻撃すらもヒラリと身を
躱すと共に連動した中で抜刀を果たす。
音波はガルフの眼前をスルリと抜けて行くと
活火山ポルナダベトルの近辺に流れ固まった
溶岩流の景色に相違無い白きマグマとなって
地を這う様に流れていた。
アルマが使う業火のギフトの得意特性とは
“熱傷”であり、触れた相手に火傷を負わせる
程の熱量を誇る特性である。
そんなアルマの攻撃を凌いだガルフが多少の
間合いを保って片手で黒刀を腰の位置で低く
構えると一度烈火の如き攻勢が止む。
「どうした…アルマよ。攻めて来るのは終わりか…?」
「ガルフ殿…アンタは何で今そんな立場に居るんですかい…?」
「……世間話なら御免だぞ…儂は…」
ロードやガルフから見たアルマは何か葛藤を
浮かべるかの様に肩を震わせている。
「世間話じゃァ無いでしょうがッ!!アンタは帝国軍に於いて凄まじい程の実績と勲章を手にして居たッ!それが…今や…政府がその足取りを追う国家指名手配…意味が解らんのですよ…俺は…!」
元国王直下帝国軍大将ガルフという男は今の
言葉が示している通りランス、ガスタと並び
プレジア国の王家であり現十五代国王を冠し
頂点に立つ男の何らかの秘密を握る重要性の
高い情報を持った男なのだ。
「……アルマよ。正義を貫くのが帝国軍だ…だが、時に其の立場では護れないモノも在る…しゃらくせぇが…儂は今でも正義の志を忘れてるつもりは毛頭ねぇぞ…!」
「だからって…アンタに憧れてこの組織で上をひたすらに目指していたのは何も俺だけじゃァ無いが…何の言葉も無しに去ったのは余りにも…じゃァありやせんかッ!?」
アルマは其の昔、大将であった時代のガルフ
の隊に所属をしていた事がある。
そしてガルフの元で准将を任され、其の後は
恩師であり憧れ、そして超えるべき存在と
見定めていたガルフからの推薦で将官の立場
を手に入れた経歴がアルマにはあった。
だからこそ、どんな経緯かは未だ不明だが
ガルフが行方をくらます様に帝国軍を去って
国家指名手配となった此の状況にアルマは
言葉に出来ない失望も胸に秘めていたのだ。
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