RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第九編第一章 流浪人の帰郷

踏み締める故郷の土

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「……なあ。さっきは気が動転しちまってたよ…アンタが俺を助けてくれたんだろ?」



ひたすらに空腹の中、がっついて焼き魚に口
を大きく開けて夢中だったロードがふとした
瞬間に眼前の編笠の男を見て口を開く。

片目が眼帯で覆われた其の編笠の男はロード
の言葉に食事の手を止めて静かに答える。



「……お前は儂の事なんざ知らねぇだろうがよ。縁あってな…お前を助けに来た…」


「……すまなかった、ありがとう。流れで悪いんだが…アンタは何モンなんだ…?」


「儂か…。儂の名はガルフ…今は特に名乗る肩書き等持たねぇ浪人ってとこか…」



ガルフと名乗った其の編笠の男はまた焼き魚
を頬張るとロードから目線を外して行く。



「……ガルフ…さんか。助けて貰ったトコ礼儀知らずなんだが…ここはどこなんだ…?時の街にいた仲間と合流しなきゃいけねぇんだ…俺は…!」



流れる川を中心とした様な大自然の中で河原
に腰を下ろしながら辺りを見渡してから目の
前に座り込むガルフに告げるロード。

すると、焼き魚を食い尽くしたガルフは手に
残った木の棒を焚き火の中に放り込んで見せ
緩りと立ち上がった背中を向ける。



「お前の仲間なら全員無事だそうだ。儂にお前を助けて欲しいと頼み込んで来たヤツが共におる…心配しなくていい…!」



背中を向けたまま口を開いたガルフの言葉に
仲間達の無事を知らせる内容があり安堵した
表情を浮かべるも、尚更早期の合流へ向かう
事を決意してロードも立ち上がる。



「お前の仲間達にも…済まんが儂の勝手で許可を得た…合流を果たす前に儂に少し付き合え…ロード…!」


「…なんだよ、そりゃあ…どこに連れてく気だよ…ガルフさん…!」



唐突に川辺を歩き始めたガルフの背中を追う
様に動き始めたロードだったが理解が出来ぬ
今の状況に首を傾げて戸惑う。



「お前…此処が何処だか未だ解ってねぇようだな…しゃらくせぇ…」


「…は?モヤモヤすっからわかる様に言ってくれよ…!」


「…此処は火の街メルフレアだ…」


「…なにッ…?」



ロードはガルフの言葉に歩きながら周囲に
広がる大自然の景色に目を泳がせて眺める。



「火の街メルフレア…お前の産まれた故郷クニだ…。川に沿って下って行きゃあよ…お前の育った家に着く。せっかくだ…汚れた服を着替えてから綺麗なナリで仲間と会うのがいいだろう…」



約二年振りだった。

帰るべき場所等無いかの様に流浪の旅を続け
て来た赤髪の青年が自身の生まれた家、更に
生まれた故郷へと帰還を果たす。

其れは自身のルーツに生じた一種の疑念。

其の動乱の中、心は軋み急流に流された。

仲間の無事を知った事で安堵感が合った事は
疑い様も無く合流したいと口にした事も全く
嘘では無かったが、あの一件で仲間は彼自身
にどんな感情を抱いたのだろうか。

少し考えたくない事でもあり今はガルフの話
に乗って家へと戻り時間を使う事を選ぶ。


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