RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第九編第一章 流浪人の帰郷

編笠の浪人

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ふと、流浪人に目を緩りと開いて行く。

其の視界に映ったのはうねりうねって緩やか
に流れる川面に射し込みキラキラと美しさを
表現する朝日に照らされた長閑な河原の風景
であり小鳥達がさんざめく様に鳴き声を上げ
新たな日を歓迎するかの様な光景だった。

赤髪の流浪人は寝ぼけた眼をゴシゴシと腕で
こすって身体に掛けていた藁や萱、稲に蒲等
を編んで作られた“ふすま”と呼ばれる旧時代
にはお馴染みだった布団を退かす。

また御丁寧に古き敷き布団だった“むしろ”も
敷かれ眼前にはパチパチと火花を散らしつつ
ユラユラと燃え上がる焚き火を見詰める。



「起きたか…?」



何が起きているのかも理解が及ばないままの
赤髪の流浪人の前に黒い編笠を被り着流しに
其の身を包む浪人風の中年男性が現れた。

すると、赤髪の流浪人は咄嗟に立ち上がると
背中に手を伸ばして普段通り刀に手を掛けて
其の身に迫る危険を振り払おうとした。

だが、赤髪の流浪人は異変に気付く。

背中に刀が無いのだ。

見知らぬ土地で見知らぬ浪人を目の前にした
赤髪の流浪人は今の自身の状態が把握出来ぬ
ままに混乱した表情を見せる。

編笠の奥から左眼に眼帯が付けられている姿
がチラリと見えた中年男性は河原に胡座を
掻いて焚き火の前に腰を下ろすとせっせと
木の棒に刺した獲れたての魚を火に当てる。



「警戒すんのもごもっともだが…そんなガキの小せぇ・・・モン…堂々と見せ付けてくんな…しゃらくせぇ」



編笠の男は赤髪の流浪人に見向きもしない儘
にそんな声を掛けて来ており、赤髪の流浪人
はふと自身の身体に目を向ける。





「……ん?…アレ?刀もねぇし…服もねぇ……って!!スッポンポンじゃねぇかァァ!!」





赤髪の流浪人ことロード・ヘヴンリー。

此の物語の主人公と言えば彼なのだが何故か
河原で全裸の姿で目醒める事となった。

髪色の様に真っ赤な表情を浮かべて慌てて男
としての大事な部分を両手で覆って隠す。

内股で恥じらいを浮かべるロードに編笠の男
は余った木の棒で焚き火の奥を指す。

其処には木に掛けられたロードのいつもの服
が風に吹かれて揺れているのが見えた。



「ちと汚れちまってるが少しは乾いたろ。さっさと着て来い…」


「お、おう…!」



良く解らない状況ではあったがロードは全裸
では事は進まないとまだ乾き切ってはいない
いつもの服を身体に纏う。

そして、編笠の男の方をチラリと見遣ると
ぶっきらぼうに今の今まで焼いていた魚を
刺した木の棒を投げ付けて来た。



「ぶわっち…!!あだだ…火傷すんだろうがッ…ニャロウ…!」


「……腹ァ減ったろ?食え…」


「…ん…あ、ああ…」



確かに異様に腹が減っていたロードは焼き魚
に目を落とし焚き火の前に座り込むと生唾を
飲んで腕白に頬張り始めて行った。



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