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第八篇第四章 許されざる疑念
宝精 ポアラ・セルヴァンテス
しおりを挟む「きゃっ…なんや、いきなり…」
エマの槍がポアラの首元を直前にして完全に
動きが止まってしまい戸惑いを見せる。
しかも右腕の槍だけでは無く左腕の針も同じ
全く身動きが取れず対照的にポアラの両肩を
掴んでいた殻を纏った両腕はエマの意識とは
全く関与せず手のひらを広げてしまう。
緩りと宙に舞ったポアラの身体が背後へと
距離を取りながらくるりと旋回する。
「ましゃか…そげんあん状態から…」
ポアラの身体が変化して行く。
宙でくるりと旋回したポアラの背中にまるで
妖精を思わせる神秘的な翼が顕現する。
そして、肩布の無い膝上までのヒラヒラと
したエメラルド色のドレスに服装が変化し
腕から肘、膝から足首に掛けてエメラルド色
の固い宝石の様な防御装甲が施された。
「大地覚醒…“宝石妖精”…!」
遂に、ポアラが覚醒へと至る。
死に際に流れ込んで来た記憶、一人ぼっちに
なってしまったと泣いたポアラのあの日から
「そんな事は無い」と涙を打ち消すかの様に
ピンチを救ったのは恩師マーシャルの言葉。
其の言葉で目醒めの刻を迎えたのは武闘家
から宝石を纏う神秘の妖精へと進化を遂げた
宝精ポアラ・セルヴァンテスだった。
「すごいっ…もうダメかと思ったけどチカラが溢れてくるっ…!エマ…悪いけどっ、アタシ…まだ死ねないやッ!!」
宙をひらりと旋回したポアラのエメラルドの
拳が同じく宙を舞うエマへ襲い掛かる。
エマは左腕の針を纏う装甲の腕で防御するも
重力を纏った其の一撃に吹き飛ばされる。
エマは体勢を崩し地面へと落下する直前に
想像とは違う出来事が起こり困惑する。
激突を覚悟したエマの身体が重力を失って
ふわりと宙へ浮き上がるでは無いか。
エマは唖然とした表情で空を見上げる。
其処へ神秘的な翼で瞬間的に頭上を取った
ポアラがグッとチカラを溜め込む様に身構え
未だ重力を失い風船の様に空へ昇るエマの
無防備な身体へ向けて其の拳を放つ。
「アタシはッ…!負けられないッ!シャーレが…仲間がッ…覚悟を見せてくれたッ!!エマッ!!アンタの話が本当ならッ…ロードは今仲間の助けがいるッ!!アタシは…アンタを倒して駆け付けるんだァァァァ!!!!」
凄まじい右拳がエマの腹部へとヒットする。
無防備なままのエマは其の一撃を諸に受けて
断崖の地面へと勢い良く落下した。
土煙を上げ砂塵を巻き起こしエマの姿は全く
見えなくなってしまっていた。
緩りと地面に降り立ったポアラはフラフラと
した足取りで砂塵の中へと向かう。
砂塵が天へと消え失せ視界が定まる頃には
ポアラの覚醒は消えていた。
今にも倒れそうなポアラはエマを探すものの
エマは砂塵に紛れた一瞬で其の場から離脱を
図った事を片膝をついて知る事となった。
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