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第八篇第三章 プレジアの宰相
蒼き戦乙女の本領
しおりを挟むエルヴィスが放つ刀の振り下ろしにマリアは
反射で刀を向かわせるが其れをグッと堪えて
刀を止めると足に纏わせた蒼き雷で速度を
上げてまた一度エルヴィスの背後へと回って
距離を取って見せる。
「流石は同じギフト…良く反応したな」
「やはり…特性は“貫通”…!」
迅雷のギフトの特性の一つ“貫通”。
解り易く言えば防御不可の攻撃であり今の様
にマリアがもしエルヴィスの攻撃を受けると
刀から伝導した雷が彼女の身体を貫く。
更に本領を見せ始めたエルヴィスの波動の質
は悔しいだろうがマリアの其れを遥かに凌駕
する領域にある為、自身の波動で軽減する事
は恐らく不可能であっただろう。
マリアの額から頬に流れる冷や汗が其れを
真実だと物語ってしまっていた。
「…って。今のも不遜な一言に聞こえるか?」
「……いや、もういいわ。貴方の性格的な問題だと解ったから…」
「ははっ、まさか帝国軍の人間に気を遣われるとはな」
「(不遜でも驕りでも無かった…。対面して初めて解る…此の威圧感…雄々しさ…幾つもの修羅場を乗り越え、鍛錬に鍛錬を重ねて辿り着く境地に裏打ちされた自信…此れが護国師団反乱軍総長…エルヴィス・ハワード…!)」
マリアが思い返したのは定時報告会での同僚
である中将バレット・ワグナーが話していた
革命軍総長ノア・クオンタムの異様な強さ。
其のノアに並ぶ稀代の先導者と目される護国
の志を掲げて凛と立つ反乱軍総長エルヴィス
という二人の強者。
定時報告会での其の話しから想像を膨らます
マリアは其の想像を超えられた事に驚く。
「…だけど、負けられない。帝国軍中将として私は貴方に勝つ…!」
「受けて立つぜ?中将マリア…!」
エルヴィスの前に立つマリアが呟く。
「迅雷覚醒…奔蒼戦騎…!」
マリアの姿が変わり行く中で蒼き稲妻を宿す
鎧に身を包み左腕に荘厳な中世の盾を持つ。
更には彼女の覚醒のモチーフとなった動物の
コヨーテの細長い耳が伸びお尻からは尻尾が
垂れる様に生えて行く。
此れぞ蒼き戦場の戦乙女と謳われる帝国軍の
中将蒼騎マリアの本領の姿。
「へぇ、強そうだな…!」
其の姿を見たエルヴィスは改めてニヤリと
笑みを浮かべて緩りと構えに入る。
そして、マリアの苛烈な攻めが始まった。
振るう刀から放たれる稲妻の斬撃は奔る雷の
名の如く迅き一閃となって襲い掛かる。
エルヴィスもまた敢えて其の攻撃を紙一重で
見切りつつマリアに正面から突っ込んだ。
だが、盾で防がれながらマリアの剣撃は勢い
を止める事は無くエルヴィスの攻撃は彼女に
一つも未だ届いてはいなかった。
だが、劣勢だと言うのに此の男は何なのか。
まるで恐れを知らぬ子供の様に攻めの姿勢を
忘れる事など無く、笑みも絶やさない。
徐々にマリアがペースを失って行く。
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