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第八篇第三章 プレジアの宰相
敗戦から示した覚悟
しおりを挟む背後から斬り掛かるドーマンの一撃は何とか
回避に成功するものの其の一撃は刀身も全て
硬化されておりコンクリートを破壊する程の
攻撃力すら誇っていた。
ウィルフィンは躱した勢いにステップを加え
再度ドーマンの肩口を攻撃するが態々防ぐ程
の攻撃では無いと言う事だろう。
ドーマンは其の儘、受けるも無傷。
硬すぎるドーマンの身体への攻撃が全く通用
していないのを悟ったウィルフィンは宙返り
を決めるとドーマンとの距離を取る。
「流石は少将が魅せる覚醒…硬力は見た目通り…理に適っているという訳だ」
「にしては、随分と拙者との戦いには余裕があると見える…驕りが過ぎるのでは無いか…?」
ドーマンの言葉にウィルフィンは静かに息を
吐くと睨みを効かせて相手を見遣る。
「驕りだと…?まさか失念しているのではあるまいな…俺にも覚醒があるという事を…」
失念はしていなかった。
ドーマンは百も承知でそんな事を述べた。
だが、驚く事にウィルフィンが発し始めた
其の領域の波動とギフトのオーラはドーマン
の想像で描いた其れを遥かに凌駕する。
「(ウィルフィン…アンタは…あの敗戦から徹底的に己を追い込んでたよな…。見とくといいぜ?帝国軍少将…ウチの懐刀の本領をな)」
コンクリートの壁に背をもたれかけさせた
エルヴィスはウィルフィンの放つ其のオーラ
と背中に想いを馳せて心の中で呟く。
「疾風覚醒…“迅蝙蝠嵐”…!」
黒き鎧を其の身に纏い全てを覆い隠すかの様
に黒衣のマントを翻らせ口元から足先までが
其の魔術師の様な布に包まれる。
そして、背中に黒き大きな翼をはためかせ
目から頬に掛けて蝙蝠のタトゥーの入った
姿へと変貌を遂げたウィルフィン。
其のウィルフィンが一歩を緩りと歩く様に
踏み出すと驚きの光景が目の前に広がる。
何と十メートルは離れていたであろう距離を
たった一歩踏み出した直後にドーマンの肩口
を今度は切り裂いて見せたのだ。
黒衣のマントが翻りそのままウィルフィンは
蝙蝠の翼で宙を舞うとドーマンを見下ろす。
「ぐっ…まさか、あの距離を一瞬で…拙者には…全く見えなかった…」
「貴様の上司に負けてから俺は鍛錬を続けた。二度と負けるつもりはない…護国を掲げる総長の懐刀…右腕として君臨する為に…」
ヒラリと舞い降りたウィルフィンは片膝を
付いて肩口を抑えるドーマンを見遣る。
するとドーマンは意を決した様に緩りと立ち
上がるとまるで剣道の構えかの様に長刀型の
刀を前に突き出し両手で胸の前で構える。
「貴公の覚悟は相解った。しかし拙者が背負うのは“正義”を体現する帝国軍の羽織…貴公らの掲げる護国は正規では無い…民に恐怖を与える自国内紛争を巻き起こした反乱軍も革命軍も帝国の御名の下…厳罰に処す!!」
ドーマンの決死の一撃をウィルフィンは
想定してマントを翻し身構える。
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