RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第八篇第三章 プレジアの宰相

天翔ける蒼き戦乙女

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視点はまたもウィズディックの屋上庭園から
宰相ガズナの言葉を訊いていたロード達側に
戻ると眼鏡の女性が溜息共に呟く。



「……ありがちな他所行きの台詞。そんな事本当に思ってるかどうかも怪しい所ね」



眼鏡の女性が放つ其の言葉に反応をしたのは
ロード達の中での最年長レザノフだった。



「…貴女は政府を余り良くは思って居ない様ですね。私目線で聞いていれば国の政のトップに立つ人間として見事な演説であったと感じましたが…」


「言葉だけを安直に取れば、ね…。本当に此の国の民を愛し、人間を大切にする行動が伴わなければ空虚な語りでしかないわ…!」



此の眼鏡の女性が抱く政府への感情は簡単に
言葉で説明するには難しい面が覗ける。

彼女には何か根が深い問題が控えている様に
も見え隠れし其の女性が醸し出す独特の空気
にロード達は言葉を挟み込めていない。



「…ごめんなさい。貴方達にこんな事を愚痴る様では其れこそ空虚ね。感情が上手く操れて居なかったわ…」



ふと謝罪の言葉を口にした眼鏡の女性を見て
いたロード達の元に屋上庭園の階段を慌てて
バタバタと駆け上がってくる一人の男性。

其の男性は荒れた息を整える様に両膝に手を
ついてほんの少しの休憩を挟むとバッと勢い
良く顔を上げて口を開いた。



「……ッ…中将殿ッ!反乱軍の総長と副長の二名が此のウィズディックを出て西の山へと抜けて行きます…奴等遂に動きましたッ!!」



中将と声を掛けられた其の眼鏡の女性は緩り
と振り返るとコツコツと男性に近付き彼が手
に抱えていた小紫色の羽織を受け取る。



「ちゅ、中将だとッ!?」


「通りで何処かで見た顔だと思った…。戦場を奔る蒼き戦乙女…蒼騎そうきの異名を獲る帝国軍中将…マリア・シリウス…!」



手に取った羽織をバサッと音を立てながら
華麗に羽織った眼鏡の女性は振り返る。



「…随分、詳しいねっ…シャーレ…」


「…美人…だからな…!」



中将マリアを説明してくれたシャーレは流れ
を無視してポアラに頭を小突かれる。

そして、マリアはひらりと宙を舞うと庭園の
端に設置されたフェンスの上に降り立つ。



「やはり、動いた…私が追うわ…。宰相の護衛から一人…手練れを動かしなさい」


「でしたら、ドーマン少将が先行しています…!」


「…流石ね。反乱軍の総長に副長…。そう簡単に逃しはしない…!」



そう言い残すと膝を曲げずに中将マリアが
緩りと地面に向けて身体を前に倒す。



「おっ、オイッ!!ここ屋上だぞッ!」



ロード達の心配は無意味に終わる。

屋上からスカイダイビングの要領で飛び降り
を図ったマリアの足に蒼き稲妻が纏われる。

そして、空を駆けるかの如く稲妻を奔らせて
中将マリアは宙を走りエルヴィス等の背中を
追走して行くのだった。
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