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第八篇第二章 運命の会談
運命の決断
しおりを挟むシェリーの全てを知ったエルヴィスはガッと
背もたれにもたれ掛かると天井を見上げて口
から大きく息を吐いてまたシェリーへと目を
向けて緩りと言い放った。
「……駄目だ」
「…えっ?」
不思議そうに呟いたシェリーの目の前で髪を
掻いたエルヴィスが続けて言葉を述べる。
「話の最後にアンタに提案があると言ってたろ?アレ、無しで頼むわ」
「え、あ、はい…私に出来る事ならと思ってましたが…」
「俺はアンタを殺さない代わりにバルモアへと戻って欲しいと提案するつもりだった。今の話聞いたら『はい、帰ります』なんて言ってくれる流れなワケねぇだろ?」
「……まだやるべき事がありますっ」
「だよな」と言いたげにエルヴィスが溜息を
吐くと標的がシェリーから変わる。
「オイ、ウィルフィン…アンタさ。此れ想像付いてて俺に提言して来たろ?」
「……何がだ?」
「とぼけやがって俺の性格熟知してんのは認めるが、逆も然りだろ?俺もアンタを良く知ってる…俺がバルモアの人間だってだけで此の人間を嫌いになれるワケねぇだろうよ」
「…そうか…」
何処か安堵した表情を浮かべたウィルフィン
とエルヴィスの会話にロード達は今正に何が
起こっているのかの判断が仕切れていない。
するとエルヴィスがまたしても深々と頭を
下げてシェリーに言葉を投げ掛ける。
「…済まなかった。シェリー・ノスタルジア…許してくれとは言わないが今までの非礼は全てトップである俺の判断だ…詫びだけ受け取って欲しい…」
「エルヴィス様っ…」
「もう俺達はシェリー姫、アンタの命を狙わない…俺達はあくまでも国を護る志の下集まった護国の志士なんだ…アンタは異国の人間でも此の国に何の害ももたらさない。だから俺達は手を引かせて貰う…!」
其の決断にシェリーを始めとしてロード達の
頭の中での解釈も追い付いて来た事で驚きの
決着に笑顔を弾けさせた。
「しししっ…やっぱ俺はアンタ等が悪い人間には見えなかった…心のどっかでこの決着を期待してたんだぜ?エルヴィス…ウィルフィン…!」
「そうさせたのは、お前の力でもあるんだろうよ…俺より先に“鬼の副長殿”の心変わりを一手打たれちまってんだからよ…!」
エルヴィスの決断に依りシェリー達バルモア
の勢力は反乱軍との壁を取り払われた。
やはり、知らないというのはウィルフィンの
言葉通り相手の気持ちを動かす事は出来ない
のだと悟ったロード達は其の上で腹を割って
話す事で人間同士の関係性は修復に至る。
其れをまざまざと体現して見せた。
常に本音でぶつかり合って来たからこその
結果と言えば其れ迄なのだろうが心変わりを
果たした“鬼の副長”ウィルフィンの身体に
幾重にも刻まれた傷の数々。
恐らく此の会談に至る裏ではエルヴィスと
ウィルフィンの壮絶なる何かがあった事を
連想させるが其れはまた別の物語ー。
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