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第八篇第二章 運命の会談
金獅子の目醒め“咆哮”
しおりを挟む五人組の汚い嘲りにエルヴィスの心は感じた
事の無い痛みに晒される事となる。
そして、彼等に背中を向けていたエルヴィス
はゆらりと立ち上がると口を開く。
「アンタ達がやったんだよな?」
「……は?」
消え入りそうな声で話すエルヴィスの声に
野盗達は笑いながら耳を澄ましていた。
「…アンタ達がやったのか、って聞いてたんだよ…何でこんな事…!」
首だけ彼等に向けたエルヴィスの表情は既に
何者をも立ち入らせる事等叶わないかの様に
漆黒の憎悪に支配されていた。
「……何でって?俺等はバルモアの人間だからだ。戦争で此の国に来たが、今はこんな有様だ…それでもな。お前等は下等なプレジアの人間…高尚なバルモアの人間には逆らえねぇ…下等種族を一人殺した所で俺等の心は痛みやしねぇから…説教なんかやめとけよ?ガキ…!」
此れが長年の戦争が引き起こして来た顛末。
敵対する国の人間等、同じ人間としてなど
教え込まれる事は無く各国が自国を正当化
して次代を育てて行く。
弊害だったのだ。
此の教え、其の物が。
「……もういい、喋るな。お前等の言葉を聞いてると反吐が出る…!」
エルヴィスは眉間に皺を寄せ狂気染みた表情
のまま振り返ると側に落ちていた二本の刀剣
を偶々発見して拾い上げる。
「オイオイ…お姉ちゃんの次はエル君が愉しませてくれんのか?」
「せっかくお姉ちゃんが身体張って助けたのになあ…」
「可哀想なお姉ちゃんだ…。あの世で再会出来るといいなあ…ガキィ!!」
野盗達が武器を取って身体を起こす。
だが、其の野盗達のニヤつきは瞬間的に消え
失せて行くのだが其の正体は五歳当時とは
思えぬ気迫の込もったエルヴィスの咆哮。
「汚ェ言葉を吐くんじゃねェよッ…!!テメェ等全員消えちまえェェ!!!!」
エルヴィスが床を蹴る。
其の瞬間エルヴィスの身体を黄金の雷電が
支配し纏われて行くがほんの一瞬で其の雷は
エルヴィスを主と認めたかの様に圧縮されて
手足同然の様に扱われて行く。
其処からは一瞬だった。
本人すらも何も覚えては居ないだろう。
気付いた時には冷たくなった姉レイナを抱き
抱える様に夜風に晒される倉庫の床で膝から
崩れる様に座り込んでいた。
涙と片付けていいものなのだろうか、此の瞳
から溢れる水滴は決して美化して映る涙では
無く、“怒り”“苦しみ”“悔しさ”“憎しみ”など
ありとあらゆる憎悪の感情が内蔵される。
「…姉ちゃん…ッ…。俺が護るって言ったのに…こんな事に…ッグ…ぁァ…ごめん…ごめんよ…姉ちゃんッ…俺が弱かったばっかりにこんな…ァぁ…一人は嫌だッ…姉ちゃんが居ないなんて考えられねぇよ…ッ…クソッ…姉ちゃんッッ……あアあァあァァぁァぁッッ!!」
エルヴィスの慟哭の叫びが木霊する。
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