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第七篇第三章 狂宴の雪山
譲れない思いを力に変えて
しおりを挟む迫り来るノエルのトドメの一撃。
だが、其の一撃はアドリーの喉元には届く事
は叶わずノエルの身体が逆に凍結して行く。
「……何が起きた……?」
「……取り消して……」
「…何…?」
横たわるアドリーの口からボソッと聞こえて
来た言葉にノエルはほんの少し動揺をする。
そして、ゆらりと傷口を抑えながらアドリー
が立ち上がると睨み付ける様な目付きで後ろ
を振り返るとノエルを一瞥した。
すると、数歩下がって口を開く。
「氷雪覚醒…“氷雨弓騎”…!」
ツインテールの髪を結んだリボンと其の手に
嵌められていた手袋が氷のアクセサリーが
施された美しさを醸し出す形へと変わる。
そして肘と膝には空色の氷を象った防具が更
に首元には氷のネックレスの様な装備を纏い
お尻からリスの尻尾の様な物が氷で造形され
弓を構えた姿へと変貌を遂げた。
「……さあ、取り消して…。私の事なんて幾ら馬鹿にされてもどうでもいいけど……エルヴィスの事だけは死んでも馬鹿にさせたりなんてしないッ!!」
アドリーが叫び声を上げる。
此れがどれだけ稀有な出来事かをノエルは
知る由も無いのだが其の心の内は簡単に読み
解く事の出来る物だった。
アドリーはノエルの足元、そして厄介な翼を
完全凍結させると弓を強く握り締める。
「……其れ程迄に…組織のトップを慮るか…。出来た部下だな…」
「…そんな簡単なモノじゃないわ…はぁ…貴方に言っても解らないでしょうけど…!」
アドリーは弓に大きくギフトと波動を込める
と踏み出した左足で雪の大地をグッと爪先で
踏ん張る様に踏み締めて一箭を放つ。
其の矢は冷たい空気を切り裂いて宙を進む。
「……仕留められるのは俺の方か…!」
諦めた様に瞳を瞑ったノエルは死を覚悟。
したのだが、其の一箭はノエルの顔面付近を
掠めて背後へと飛んで行き、ノエルは事態に
驚きを隠せずに慌てて目を開けた。
「何故…殺さぬ…?」
「言ったでしょ?私達は無益な殺生はしない…はぁ…此れが私達の掲げる護国の志よ…貴方が尻尾振ってる政府と同じにしないで…」
「……やはり、甘いな…」
「其の代わり此処は退いてもらうわ…でなきゃ…私も鬼にならなければいけないの…解って頂戴…?少将ノエル…」
「敗者に言葉は無いモノだ…」
アドリーは氷漬けになったノエルに颯爽と背
を向けると其の儘、緩りと雪の大地を踏んで
前へと向かって行った。
そして、アドリーの覚醒が解けるのと同時に
ノエルの身体を静止させていた氷も溶けて
消えて行き雪山エルブルーム山の麓の平野
での一戦に幕が下りて行く。
護国師団反乱軍参謀アドリー・エイテッドと
国王直下帝国軍少将ノエル・スティングの
一戦はアドリーに軍配が上がるのだった。
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