RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第一章 雪降る氷山地帯の再会

サバネの裏の顔

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「私はロード君に自分の仕事を新聞記者だと言いましたよね?其れも本当なんですが。実はもう一つ別の仕事をしてまして…」



何だか歯切れの悪い返答をし始めたサバネの
表情の変化にロードは黙り込んで顔を覗く。



「実は…私は新聞記者と別に裏家業として情報屋をやっています…。それもアンダーグラウンドな情報ばかりを取り扱った所謂、裏の情報屋なんです…」


「…意外だな。其れは新聞記者として裏に向かって足を踏み入れていってるのか?」


「……いえ。通常の新聞記者の仕事とは全く関係がありません…」



何かを抱えているとロードは目の前のサバネ
が醸し出す重たい事情を察し始める。



「……ソレを話してくれたって事は聞いてもいいんだよな…?」


「…ええ。実は…私には一人の妹が居るんです。ですが此処数年、会えてすらいません」


「離れ離れの妹…。その為に裏の情報を集めてるのか?」


「…はい。事の発端は私達の両親が殺された事件から始まりました…」



サバネは自身の記憶を紐解いて行く。

サバネと三つ歳の離れた妹は両親が殺された
事で大きなショックを受けてしまった。

一年程にも及ぶ期間の間サバネの妹はろくに
食事すら摂れずどんどんと痩せ細って行く。

勿論サバネにとっても両親が殺された事件は
胸が痛く押し潰されそうになる程苦しんだ事
は間違い無いのだが、目の前で痩せ細って
行く妹の為を思えば兄としては早く切り替え
妹を護って行かなければいけないと考える。

そしてそんな生活から一年がたった或る日。

サバネの元から妹は姿を消してしまった。

其の予兆が見えた前日に妹は事件当日に自分
達が暮らす家で両親が殺された其の事件現場
となった一室に落とされていたとあるモノを
手に握り締めて悲痛な胸の内を明かした。

一年もの間何かの手掛かりになればと其の家
に残されていた其のモノを手にサバネの妹は
「ただ座って忘れて行く事は出来ない」と兄
であるサバネに言い残した。

そして消息を絶った妹の足取りを追いかけた
サバネは其のモノが何なのかを知った。

其処からサバネは既に就業していた新聞記者
としてとは別に妹を探す為に裏の情報が流れ
込んで来る情報屋を始めたのだった。



「そのモノってのは…?」


「青い蜘蛛が刻まれた白面…ですよ…」



サバネの言葉にロードは身体を膠着させる。

思い当たってしまったのだ、其の青い蜘蛛の
描かれた白面を身に付ける集団の存在に。



「それって…しにぐも何ちゃらとかいう…」


「ええ。傭兵武族・死蜘蛛狂天です」



シェリーを襲って来た光の街の林道で目に
した青い蜘蛛の描かれた白面の集団。

傭兵武族・死蜘蛛狂天がサバネの両親を殺し
妹の失踪に関わっていると聞かされたロード
は彼等の異質さにゾッとする。

だが、サバネの話は此れだけでは終わらず
死蜘蛛狂天と妹に関してまた更なる新事実が
ロードの耳へと飛び込んで来るのだった。




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