RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

包み込む閃光

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シェリーの覚悟に呼応した閃光のギフトが
辺り一体を桃色の光で包み込む。

其の光景にライアは動きを止める。

唖然とした表情で辺りを見渡すライアと何も
変わらず口を開いたままで固まるシェリーは
自身が目覚めた閃光のギフトが顕現させた
景色に瞳をパチクリとさせて動けない。



「何じゃ…此れは?…ギフトのチカラ…ならば王女はあの閃光のギフトを授かったと言う事でありんすか…?」



ライアは感情の整理が追い付かない儘、自身
の発した其の言葉に疑心暗鬼になっている。

其の桃色の光は暖かくライアの背後で倒れた
ロードの身体をスポット的に照らし出す。

シェリーですら何が起きたのか未だに理解が
及ばぬまま伏せた姿で光に照らし出される
ロードへと目を向ける。

倒れ身動きが取れなかった筈のロードの鼓動
が強く新たな音を奏でる様に高鳴る。



「(何だ…?あったけぇな…俺負けたんだよな…動けねぇし…ってそんな事言ってる場合かよ…シェリーは俺が護るんだ…“動け”だの“立て”だの言うんならチカラ貸せよッ!?なあッ!!?)」



シェリーの覚悟に因って其の場を暖かく包み
照らした光にロードの護りたいという覚悟が
柔らかく、そして強く、呼応を始める。

ふわりとロードの身体が宙に浮く。

自分の意思で自分の足で立つのではなく光に
誘われ立たされた、理由は解らないが其の姿
を見つめていたシェリーとライアには目の前
で起きている光景はそう見えた筈だ。

少なくとも否定し切る事は出来ない。

桃色の光に包まれたロードがやっと自分の足
で石の地面に降り立つと先程迄、何の力すら
入らなかった身体から痛みが消えている事に
驚き自身の身体を撫で回す様に見つめる。

そして、再びロードの身体に真紅の炎を宿す
業火のギフトのオーラが纏われたのだが其れ
だけでは無い、桃色の光のオーラも同じ様に
ロードの身体を包んでいる。

燃え上がる真紅の業火と燦然と輝く桃色の
閃光のオーラ、二色を纏うロードが地面に
転がり落ちていた刀の柄に手を伸ばす。

遂に、ライアへと振り返って見せた。



「馬鹿な…何じゃ其の姿は…。覚醒の其れとも違う…何故二種類のギフトを童が宿しているのじゃ…いや…其れよりも傷はどうしたでありんす…立ち上がるだけのチカラは無かった筈じゃ…!」


「……わからねぇ」


「…何じゃ、と…?」


「…良くわかんねぇんだ。でもよ…俺はシェリーを護りたいって願っただけだ…」


「…有り得ないでありんす…!」


「ギリギリ聞こえたんだ。アンタの言葉…信じ抜く程に裏切られがちなこの時代…確かにそうかもしんねぇ…。綺麗なモノばっかりじゃねぇもんな…でもよ?」


「……何じゃ…?」


「今のこれも魔法みてぇな奇跡だけどよ。護る想いは揺るがねぇ…それがどんだけ不確かな未来でも…俺は純粋に信じて生きて行くだけだ」



ロードの手に握られた刀の鋒が動揺を
隠せないライアへと向けられた。
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