RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

吹き荒ぶ鎌鼬

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ポアラの攻撃をライアは其の手に握った扇で
防ぐと甲高い金属音が闘技場に響き渡る。

ライアの持つ扇は只の扇ではなく鉄で出来た
鉄扇であり殴打での殺傷能力を持っている。

更にライアは鉄扇に疾風のギフトを纏う。

其の色は梅重色(紅い梅の花の様な桃色)を
しており着物の色と重なる程鮮やかな綺麗さ
を醸し出す上品な風を起こす。

ポアラの重力をものともしないライアは着物
の裾を翻しひらりひらりとポアラが放つ拳に
握られたナックルダスターの連撃を華麗に
そしていとも容易くいなして行く。



「姫の護衛かと思っとんたんじゃが此の程度でありんすか?小娘…」


「うるっさいっての…香水の匂いキツいよ?お姉さん…」


「大人の色香じゃ…。尻の青い小娘にはまだ解らなくて当然でありんす」


「…ッ…誰のお尻が青いっての!?」



挑発に負けたポアラは勢い良く振りかぶった
拳に自身の持てる最大限の重力を宿すと少し
跳躍をした勢いそのままに右拳を叩き込む。

だが、ライアはやはり格上だった。

息も切らさずひらりと其れを避けて背後へと
回ると切り返しに真横に鉄扇を振るうライア
の手元から梅重色の烈風がポアラを襲う。



「しまっ…っぐ…きゃあああああァッ…!!」



ポアラの身体を襲ったライアの梅重色の烈風
は特性“裂傷”を含みながら空中へと跳んだ儘
の身体を切り裂くと鮮血が舞う。

其の一撃は正しく、鎌鼬の如く。



「…ポアラッ…!悪ィ…シェリー…俺があの女止めっからポアラの事頼めっか?」


「は、はいっ!」



ロードは石の地面を蹴るとライアをポアラの
位置から引き剥がそうと背中の刀を抜刀して
力強く上段から斬り掛かる。

其れを余裕を持って空中へと舞い、躱した
ライアの間隙を縫ってシェリーがポアラの
元へと辿り着くと首を持ち上げ倒れたポアラ
を抱える様に顔を覗き込み口を開く。



「ぽ、ポアラ様っ!大丈夫ですかっ…!?」


「…ぐっ…ぅ、うん…ごめんね?シェリーちゃん、怪我しちゃって…」



ポアラはシェリーが森の街で放った言葉を
心に留めており、出来るだけ怪我をせずに
倒れないと心に決めたばかりであった。

毒虫の毒で寝込んでいたのも昨日の朝まで。

取り戻したいという思いとは反比例した身体
の重さはあった事も伺えてしまう結果だ。



「今はロード様に任せてこちらへ…!」



シェリーのひ弱な腕では幾ら軽い女の子と
言えども抱える事は出来ず、お互いに足を
引きずり合う様な形で端へと向かう。

だが、其の姿は一国の王女としてはイメージ
が湧かない程の泥臭さであった。

ポアラから見れば高そうなドレスなどお構い
無しに裾が擦り切れながらも必死にポアラを
助けようと行動しているシェリー。

バルモアの王女も今、此の仲間達の為に何か
出来る事は無いかともがいている。
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