RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

エゼルの猛攻

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「ぐっ…何だ…?」


「…此れも鉄鏡のギフトの特性です、シャーレ殿…!」



其れを聞いたシャーレは身動きの取れない
空中で咄嗟に片手を差し出すと手のひらから
次縹色の水流をエゼルに向けて放つ。

其の水流でエゼルの視界が途切れた途端に
ほんの少し身体の自由を取り戻したレザノフ
はシャーレの身体を掴んで横へと退避する。

何とか地面に降り立ったシャーレとレザノフ
は次に来るエゼルの攻撃に備えて構える。



「あいたた…何すんの?彼氏くんさぁ」


「今のは…特性の一つ?」


「ええ。鉄鏡のギフトの特性の一つ“磁力”と言います…」



鉄鏡のギフトの特性“磁力”とは其の名の通り
人や物質に磁力を付与し引き離し、引き寄せ
を自由自在に扱えるチカラである。

エゼルはまるで蚊を払うかの様にシャーレの
水流を手のひらでポンポンと叩くと何事も
無かったかの様に其の姿を見せる。



「シャーレ殿…。御助力願います…出力と維持時間は下がるかとは思いますがやるしかたりません」


「ええ。任せて下さい…!」


「鉄鏡覚醒…“装鋼銃士スティールガンナー”…!」



レザノフもまたエゼルを前にして覚醒を
解放すると鋼の鎧を纏う姿へと変わる。

そして大きく伸びた二丁のライフルを手に
硬化した弾丸を何発も何発もエゼルに向けて
連射を試みると低い体勢へと変わったエゼル
は地を這う様にしながら駆け出す。

弾丸を反発させ軌道を変えながら槍と鋏を
使って残りの弾丸を弾きながらエゼルは
二人の近距離へと迫り来ていた。

シャーレは水分身を創り出して青龍刀を
振るい水流を幾重にも、重ねてエゼルへと
放つが其の攻撃は届かない。



「あれれ?護衛隊のオジサンさぁ…何かもう既に疲れてね?」


「さあ、其れはどうでしょうか?」



エゼルの覚醒のチカラとレザノフの覚醒の
チカラは練度からすればレザノフの方が上。

の、筈だったのだが今はあからさまにエゼル
がレザノフの力を上回っている。

森の街にあるピースハウスでの死蜘蛛狂天の
幹部リゼアとの死闘を経て何里もの長駆を
休まずに進んで来た疲労の弊害。

前回の圧倒的な強さを見ていたシャーレも
其のチカラが不十分な状態だと言う事を
理解せざるを得なかった。



「…オジサン強そうなのになーんか勿体ねぇつーか?…まあこれも運命っしょ?」



エゼルは再び両者を磁力で引き寄せると先に
小賢しく追撃を狙って来るシャーレを槍で
引き裂こうと回転させて振り下ろす。

シャーレは磁力の引力に抗えず其の攻撃から
逃れる術を此の一瞬では思いつかない。

シャーレへと槍の一撃が迫る其の瞬間。

シャーレの目の前で何故か鮮血が舞い散る。

其の光景にシャーレは唖然と口を開いたまま
身体から血の気が引いて行くのを感じた。



「…ぐっ…レザノフさんッ!!」



エゼルの槍の一撃は庇ったレザノフの背中を
大きく切り裂くと体勢を崩したレザノフは
シャーレにもたれかかる様に地面に向かって
鮮血に塗れながら倒れ込んでしまった。
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