RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

フロウvsオーズ

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「ほう。物々しいナリだな…酒呑童子か…」


「…ヒック…ああ、そうだよォ…あっしは鬼さぁ…酒を飲んで暴れるだけのねぇ…うぃ~」



覚醒の姿となったオーズは其の一歩を踏む
度に辺りを振動させながらフロウの元へと
一歩ずつ一歩ずつ進んで行く。

そしてメイスを振り上げるとフロウの脇腹
辺りを目掛けて薙ぎ払う様に振るうとフロウ
は其の一撃を大槌で防御する。

だが、異変は直ぐに訪れる。

メイスを防いだ大槌を伝ってオーズの大地の
ギフトの特性である振動のチカラが骨から骨
へと伝播する様に染み込んで来る。

其れを察知したフロウは一度強く地面を蹴る
とオーズの頭上を跳び越えて背中側へと距離
を開ける様に動いた。

痺れる様に骨が軋む腕をフロウは体内に
流れる波動を一極集中させるかの様にして
其の振動を無効化する。



「…やるな。オーズ・サーヴェント…まさかこんなに簡単に振動のチカラを流し込まれるとは思いもしなかった」


「…いやあ…本来なら今ので終わりさぁ…アンタだから退避を可能にしたんだよォ…ヒック…やはり伊達じゃないねぇ…うぃ~」


「そうか、お褒めに預かり光栄だ。次は攻めに転じる流れだな…!」



フロウの言葉にオーズは直ぐに反応すると
地面が粘土へと変わり自身の足に絡み付く
様になっていると知ると急いでフロウと
同じ様に波動を流し込む。

だが、其の時には既にフロウはオーズの頭上
へと跳躍を果たしていた。

其の巨体を宙で動かし初めて大槌を両手で
強く握り締めると表情に力を込めて歯を痛い
ぐらいに食い縛り振り下ろした。



「…レスラーとしては道を絶ってしまったが此の決断で今進む道を見つけた…ッ…明日を生きる者達がより多くの未来に夢を抱ける世を創るッ!!其の流れは俺達が創り上げるのだッ!!!!」


「…真っ直ぐだねぇ…うぃ~…」



頭上から迫り来る大槌の攻撃に向けて不自由
から解放し切れていない其の足を出来る限り
の力で踏ん張り斜め下からメイスを力強く
振り上げると両者の武器が大気をも震わせ
ながらぶつかり合いを演じる。

其のぶつかり合いはほぼ互角に終わると
フロウは地面に降り立ち笑みを浮かべる。

其の表情にオーズは懐かしさを噛み締めた。



「(ああ…輝いてるねぇ…。レスラーを緊急引退したと知った時は…残念だったさぁ…だがこないだのあの不良の男…ヒック…反乱軍のガルダもだったが…こんな奴等を従えるノア…エルヴィス…此の二人の度量が伺えるよォ…全く…うぃ~)」



心の中で呟いたオーズは政府に楯突いている
両軍の動向を加味しても彼等に生き生きと
した目的意識を感じてしまう。

もう十四年も少将を務め数年前から帝国軍
の中で改革として始まった実力至上主義の
登用の中でも其の地位を守って来た。

オーズには明確な生きる目的は無く本人は
死に際に向けて人生を只、真っ当するだけ
そう答える人間なのだが、だからこそ若き
新世代の両軍に名を連ねる彼等が眩しく
見えるのかもしれなかった。
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