RISING 〜夜明けの唄〜

第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

大地激震のダーク・マッチ

先に仕掛けたのは帝国軍少将オーズだった。

メイスで派手に地面を叩くと此の区域を
揺るがす程の振動が引き起こされる。

グラつく大地とは反比例するかの様にフロウ
は笑みを浮かべたまま足場も表情も何一つ
揺らぐ事は無く、其れを見たオーズは大地の
ギフトの枯葉色のオーラを纏って間合いを
一気に詰めて行き生み出した岩の塊をメイス
で叩き割ると礫の嵐がフロウを襲う。

フロウは其れを見るや否や身体に此方も相手
と同じく大地のギフトを纏って行く。

紫色のオーラを纏ったフロウは肩に乗せた
大槌ではなく伸ばした左手の手のひらから
土の渦の様な壁を生み出した。

其の土の渦は岩を砕いた礫の嵐を呑み込むと
全ての勢いを封じ込めて土の渦に同化させて
しまっているが、此れも大地のギフトの特性
の一つ“粘土”であり特性粘土は粘り気のある
土を操る事に依って敵の攻撃やダメージを
無効化する事が出来る利点を持っている。



「…ヒック…やるねぇ…あっしの攻撃のなんて物ともしてないみたいだよォ…」


「さあ、次は此方が攻める流れの様だ。行くぞ？帝国軍少将酒呑しゅてんオーズ・サーヴェントォォォ！！」



力強く地面を蹴ったフロウは其の肩に掛けた
大槌を振り上げる様に振るうとまるで其の圧
が突風を引き起こしたかの如く防御体制へと
入りメイスで其の攻撃を止めようとした相手
のオーズを背後へと吹き飛ばす。

西コンテナ区域の石壁を二つ程を貫く様に
風穴を開けながら背後へと吹き飛んで行く
オーズは遂には二十メートル程離れた場所
に重なっていた段ボールの中へと飛ばされ
土埃を上げながら其の勢いを止めた。



「しまった。壁を壊した挙句、重ねてあった段ボールまであの有様か…謝罪をせねばならんな、此れは」



改めて大槌を肩に掛けたフロウは少将である
オーズを一撃で吹き飛ばす程の強烈なパワー
の違いを見せつけ笑みを見せていたが其れは
次の一瞬で崩れ去って行く。

危険な匂いを嗅ぎ取ったフロウは眉間に皺を
寄せるとオーズが突っ込んだ段ボールの塊達
が崩れた事に因る土埃の奥へと目を凝らす。

其処からフロウは何かを察知している。

土埃の奥からゆらりと朧げに見え始めた人影
は緩り緩りとフロウに向かって足を進めるが
其の姿にはおかしい部分があった。

額から一本の角が伸びているのだ。

身体は岩肌の様に刺々しくなり肩にはオーズ
が付けていた様な鬼の面の肩当てが見える。

そして顔付きは正しく鬼の様に変化をした
物々しい姿の男がゆらりと土埃を裂いて
フロウの前へと姿を現した。



「…ヒック…大地覚醒“震呑童子クエイクオーガ”…うぃ～っと…」



フロウの危機感知が物語って居たのは目の前
のオーズが見せつけた覚醒の事だった。

酒呑童子から名付けられたオーズの異名は
此の鬼の姿と瓢箪から来たものの様だ。