RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

ルナvsエルム

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エルムの覚醒の威圧感のある異様な波動に
其の場は包まれると氷のステッキへと変化を
したエルムの武器が振るわれると共に蒲公英
色のシャボン玉が幾つも宙を揺蕩う。

其のシャボン玉と共に次に振るわれたエルム
のステッキから鋭い嘴をした氷のペンギンの
群れがまるで散弾銃の様に放たれる。

ルナは紫苑色の氷の壁を石畳みの地面に手を
当てて天に伸びるかの様に創り出すと其の
ペンギンの群れの飛び込みを防ごうとするが
何体もの嘴が突き刺さる事に因って紫苑色の
分厚い氷の壁ですら風穴が開いてしまった。

氷の壁から横に滑り込んでライフルを構えた
ルナの連発はエルムが生み出していた淡雪の
特性を持つシャボン玉に触れると弾けると
共に其の勢いを失ってしまったのだ。

此れがエルムの覚醒である泡雪魔導スノーソーサーの真骨頂
攻防一体の真価という事をはっきりと知る。



「戦いなんてなにも生み出さないんだよっ?なのにルナちゃん自身はなんで戦うのっ?」



一度攻撃の嵐が止んだタイミングでエルムは
またもルナに対して同じ質問をぶつける。

ルナは滑り込んで低く構えていた身体を緩り
と背筋を伸ばす様に立ち上がるとライフルを
改めてエルムに向けて構え、口を開いた。



「私は…既に此の世を去った…兄の本懐を遂げる…ただ其れだけを自身の夢として描いている…戦いとは死の隣り合わせにあるものだ。だから兄は死んだ…もう私の周りからそういう人間は出さない…。今は痛みに耐えて立ち上がる時なんだ…私にとっての未来への照準はブレていない!」



エルムは無口なのかと感じていたルナが長く
紡ぎきった其の言葉と姿に唖然として口を
大きく開いたまま固まると手に握るステッキ
を緩りと地面に向けて降ろした。



「ふーん…やっぱり強い意志があるんだねっ。バッカみたいとか言っちゃったねぇ。許して、ルナちゃん?」



ライフルを向けられたままのエルムの無防備
な笑顔にルナをふわりと武器を握る両手から
不思議と力が抜けていってしまった。

勿論、覚醒による生み出された相手の攻撃を
呑み込み勢いを消すシャボン玉は浮遊して
いる為、攻撃は簡単には通らない。

なのだが海風が吹き抜けるジェノスハーバー
の東コンテナ区域は柔らかい空気へと突如
として変化を遂げて行く事となった。



「読めぬな。クールに振る舞おうとしても不思議と崩される…エルム少将は何故帝国軍に所属しているのだ?」


「わっかんないんだよぇ。でも入っちゃったからには無意味な戦いだけはしたくないし止められるなら止めたいって思うの」



エルムは覚醒を緩りと解いて行くと未だ武器
を構えたままのルナの前で後ろで手を組むと
にっこりと微笑んで見せるのであった。
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