RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
221 / 849
第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

攻防戦の開幕

しおりを挟む

そしてジェノスハーバーに展開を果たした
革命軍は地元の立地に詳しい幹部デューク
を作戦隊長に据えて作戦決行を待つ事になり
デュークは三日月型の港の中央で見慣れた
海を石造りの太く長い桟橋の上で眺める。

遥か高い空へと伸びる大きな灯台の下で人気
の無い普段とは表情を大きく変えた其の場で
静かに流れる海風に髪が揺れ動く。



「…やはり。帝国軍の動きは確かな物であったという訳だ。戦い無くして進もうなど夢見がちであろうな…致し方無い」



危惧していた帝国軍の規制が間に合い此の
ジェノスハーバーには一般人の姿は見えず
鎖国をした今でも漁師達の活気が広がる
普段の様子では無かった。

其れと同時に革命軍内の内通者の存在が
改めて際立つ事となってしまう。

そしてデュークの元に二本の通信が入る。

其れは東西の大型コンテナ付近に此の作戦の
鍵を握る二人の革命軍幹部が展開した事を
意味する物であった。

静かに目を閉じて貨物船の到着、そして
帝国軍を含めて潜伏が確認されている反乱軍
の襲撃に備えて、集中を高めて行く。

そしてジェノスハーバーに展開した革命軍の
幹部が立つ三箇所に足音が近付いて来る。



「…あかんなあ。そない大袈裟に動かれたら僕らが動くしか無いやないの…」



背中越しにも薄ら笑いを含んだ様な声色を
耳にしたデュークが緩りと振り返る。

デュークの正面には耳と目に被さる程度の
茶髪でスクエア型の眼鏡をした男がいた。

其の男は細身な体躯に威厳の在る小紫色の
羽織を颯爽と纏い雰囲気を見せつける。



「水の街にある支部の人間でも無い者がわざわざ御苦労な事だ。帝国軍中将…バレット・ワグナー…!」


「僕を知っとるんやな…有難い事や…。そやけどな…此処は僕の出身の街や。帰省するには丁度良かってん」


「ほう。同郷出身とは嬉しい事だが…。帰省とはどうも気楽な気持ちらしい」



デュークの言葉に帝国軍中将バレットは特徴
でもある京都弁で言葉を紡いで行く。



「そないに気張らんといてや?ちゃっちゃと帰ってくれたらそれでええんやさかいなぁ…!」


「私達に此処で手を引けと?其れは余りにも夢見がちな願望であろう」



デュークは脇に抱えた鋼の兜を頭に被ると
灯台の白い壁に立て掛けていた武器を持つ。

其の武器は種類としては槍なのだが、形状が
細長い円錐状をしており珍しい物であった。

イメージとしては日本の古き槍という武器
より中世ヨーロッパの騎士団が手にした
ランスという表現が近いとも感じる。

鎧を身に纏い鉄の兜を被りランスを手にした
デュークの臨戦体制に目の前のバレットは
呆れた様に笑みを浮かべてデュークを見遣る
と表情とは裏腹に冷たく言い放つ。



「…難儀やわぁ…。そないに死に急ぎたいなら好きにしたらええよ…」



バレットの目付きがデュークを襲う様に
冷たく浴びせられて行く。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...