RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第二章 港町に集う者達

声にならない言葉

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「ねぇ、ポアラちゃ~ん。僕ちんと仲良くしようよ~」


「だから…勘弁してってばぁ…」



ナンパ男の誘いがしつこく困り果てていた
ポアラを見兼ねて改めてシャーレが間に入る
とナンパ男の顔を見つめながら口を開く。



「嫌がっているだろ?もうそろそろ引き退ってくれてもいいだろう」


「ご忠告どうもでぇ~す…。でも彼氏でも無い兄さんからの言葉で僕ちんは止まらないっしょ?兄さんがポアラちゃんの事がラヴなら引き下がってもいいけど?」



ナンパ男はシャーレ達の反応を見てそんな
ふざけた言葉を口に出して見せるとシャーレ
だけでなくポアラ迄もがビクッと反応すると
固まりながら更に表情が赤く成って行く。



「(あ~…テンアゲでポアラちゃんに声掛けてたけど…こりゃダメっしょ。どう考えても両思いじゃん…なのに…どっちも言い出せてねぇ~からこんな事に…。ちょっとかわうぃしこのままイタズラいっちゃいまっショウタイムっ)」



ナンパ男は心の中でそんな内容をブツブツと
呟くとシャーレに迫り、下から上目遣いで
ニヤリと眺めると色付きサングラスの下から
不思議なプレッシャーを与え始める。



「ねぇ、兄さんってば。ラヴなの?ラヴならさ…野暮だからもう僕ちん手ぇ出さないって…」


「わ、私は……」



普段、冷静沈着なシャーレが此処最近ポアラ
の事となると今の様に喉を締め上げたかの様
な苦しそうな声を上げる事が増えていた。

シャーレの其の緊張感に何故か隣に立つ
ポアラ迄もが金縛りの様な緊張感に晒され
時折、小刻みに震えながらシャーレの次の
言葉を今か今かと待っていた。



「ん~?」


「わ、わ、わ、私は…ァ…」


「はぁ…」



ナンパ男の更に詰め寄ったシャーレの口から
次の解り切っている言葉が出て来ない事に
溜息を吐くとシャーレの首に手を回して不意
にポアラと距離を作って小声で話し始める。



「…ていうかさぁ兄さん。そんな次の言葉が読める事そんなないっしょ?言わなくてもバレバレ…ポアラちゃん顔真っ赤だしぃ?」


「なっ…」


「でもさぁ?…ちゃんと言葉にしたげなきゃポアラちゃん…アガんないっしょ…?いつまでもそんなんだとマジで取られちゃうよ?あんなかわうぃ~子なんだから」



ポアラには聞こえない様にシャーレの耳元で
言葉を囁いたナンパ男は肩をパンと一回叩く
と背を向けたまま手を上げて去って行く。



「じゃあねぇ~ポアラちゃ~ん。兄さんも…あじゃじゃした~」



去るナンパ男の姿が通りを曲がって行くのを
見送ったポアラがシャーレに駆け寄った。



「だ、大丈夫っ?シャーレ…」


「ああ。ポアラ…済まんな。あの夜からどうにも意識してしまって…」


「え、う、うんっ…」


「…一人だと危ないから一緒に買い物して早く戻ろう」



告白では無かったがシャーレの笑顔にポアラ
も連られて笑顔を浮かべると頷いて見せた。
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