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第六編第一章 一輪の花を巡って
陽気な目覚め
しおりを挟む「……んぅ~ん…はわわっ…ポアラ様っ」
差し込んだ陽射しに誘われて背筋を伸ばし
眠りから目覚めたシェリーの視界が一定に
なるにつれて目の前で身体を起こしたポアラ
の昨日までとは大きく変化した姿が映る。
声と共に立ち上がり抱きついたシェリーを
受け止めたポアラは笑みを浮かべる。
「シェリーちゃんっ。心配掛けてごめんねっ?」
「そんな事…本当に良かったです…顔色がとても良くなりましたね」
「うんっ。もう平気だよっ、ありがと」
交わされたポアラとシェリーのきゃっきゃと
した高い声に呼び起こされる様に男性陣が
順に其々の目を見開いて行く。
「おっ!ポアラ…元気になったみてぇだなぁ…あー…良かったぜホント」
「御気分如何ですか?ポアラ殿」
「ロード…レザノフさん。うんっ、もう痛みも無いよっ…!」
抱きついたポアラとシェリーの元に歩み寄る
ロードとレザノフに続いてシャーレも含めた
五人がまた輪を描く様に集まったのだが一人
シャーレは気恥ずかしそうに頬を掻く。
そんな所に小屋の引き戸が開くと薬師の老婆
メディチが笑顔を見せて入って来た。
「ほう…お嬢ちゃん。薬が効いたみたいさねぇ…。此れならもう、安心だよ」
「あ、あの。本当にありがとうございましたっ!」
深々と頭を下げたポアラに続いてロード達も
順々に頭を下げてメディチへ感謝の意を示す
とにっこりと微笑んだメディチが続ける。
「はいはい、もう元気なら其れでいいさね。そしたら誰か運ぶの手伝っておくれ」
メディチに頼まれ着いて行ったシェリーと
ポアラに依って運ばれて来たのはメディチ
の手料理でありロード達は忘れていた様に
空腹を思い出しお言葉に甘える事にした。
薬師の老婆メディチからの振る舞いに笑顔を
絶やす事無く食事にありつく五人。
其の中でシャーレとポアラがほんの少しだけ
顔を赤らめたまま目を合わす度に不思議な
空気感を漂わせるとロードが首を傾げる。
「どうした?お前等…何か顔真っ赤だぞ。まだ熱があんのか?」
「ち、違うって…ッ…も、もう元気だってばっ…!」
「(顔が真っ赤なのを弄られるのがまさか私達で…其れがロードからとは…。何だか複雑な気分だな…)」
心の中の言葉を呟いたシャーレの表情を見て
レザノフはふふっと笑みを浮かべた。
其れに気付いたシャーレは更に其の顔を
真っ赤に染めて行く。
気恥ずかしそうにするシャーレの表情に
当てられたのかポアラもまた夜中のドキドキ
を思い出して俯いてしまった。
「…ん?何か変なヤツ等だな…」
ロードは隣のシェリーと目を合わせると
お互い同じ様にまた首を傾げていた。
そして食事を終えたロード達はメディチへの
感謝を改めて言葉にすると小休止となって
いた目的地への歩みを再開して行った。
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