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第六編第一章 一輪の花を巡って
誤解の払拭
しおりを挟む「……もしかして…身内が毒虫の毒に犯されてんのか?」
「ああ…。麓の村落で俺等の帰りを待ってる…!だから…頼む、行かせてくれッ!」
ロードは此れ以上の争いは無意味だと悟る。
言葉を尽くして山賊団がナワバリにする此処
の山の土地でアユターレの花を手に入れる為
に事情を説明し始めている。
「私達は…仲間の為に急ぎ戻らなければいけない…。私利私欲の為に金に成るアユターレの花を狙っている訳では無いのだ…。解ってくれ!」
ロードとシャーレが紡ぐ言葉を黙り込み口を
噤み聞く事に専念していたバディットは決心
が固まった様に立ち上がると隣に立つベニー
に声を掛け始めた。
ロードとシャーレはバディットが立ち上がる
姿に合わせて交渉が決裂した場合に備えて
再び武器を構えて臨戦体勢を取る。
バディットの下す決断に注目が集まる形と
なり、次の一言を緊張感を持ってロード達
はバディットの行動を待っていた。
「ベニー。まだ町に降ろして無い花が幾つかあったよな?赤坊主達に一輪、分けてやれ」
「いいんですかい?バディットの兄貴。良く現れる金目当てのバカかもしれませんよ」
「其処まで腐った目ェしてねぇだろ。コイツ等はよ」
「…へいッ!」
バディットの言葉ににっこりと笑顔を見せた
ベニーは岩場を駆け降りると自分達が拠点と
している穴蔵の中へと走って行く。
「…アンタ…!」
「悪かったな…。いつも通りに金目当てで俺等の縄張りに入ってきたバカ共かと思ってよ…。迷惑かけちまった。詫びに一輪持ってくっから其れで勘弁してくれや」
「……ッ……有難い。此れでポアラを助けられる…ッ…」
噛み締める様に言葉を発したシャーレの瞳
にはうっすらと涙が浮かべられている。
ロードも其れに気付いたが野暮だと感じて
其処には触れずに代わりに笑顔を浮かべた。
「…俺等もハナから理由を説明すりゃあ良かった。慌ててそのまま戦闘に入っちまって悪かったな…やっぱ、話せば解る事の方が多いよな…」
少し反省した様に頬をポリポリと掻きながら
気まずそうな表情を浮かべたロードの謝罪に
バディットはうっすら笑みを浮かべた。
「おーいっ…赤い君、青い君ィ…はぁはぁ…気をつけて持ってってやってくれよ?」
「ああ。恩に着るぜ」
息を切らして駆け戻って来たベニーから一輪
のポアラの命を救う希望の花を受け取った。
ロードとシャーレは山賊団のバディットと
ベニーに感謝を述べた後、急ぎ下山に入る。
急な斜面を駆け上がり、山賊団との戦闘を
経て足は疲れ切っているのだろうが、二人に
とってはそんな疲労など無意味であろう。
今の二人にとっては、此れでポアラを救える
と心の中は前向きな想いで満たされている。
全員が安心を一秒でも早く出来る様にと
ロードとシャーレはパンテ・コネーロ山の
急斜面を駆け下りて行くのだった。
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