RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第五編第三章 溢れる涙は光と成りて

歓喜の輪の外で

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「スッゲェェ!!レザノフさん、アンタ強ェなぁぁぁ!!!」



跳び跳ねる様にしてレザノフの元に駆け寄る
ロードを先頭にシャーレとポアラもレザノフ
を囲む様にして声を上げる。



「流石ですね、レザノフさん。終始敵を圧倒していました」


「いえいえ、そんな」



シャーレの言葉に謙遜するレザノフに
ポアラからも「そんな事無い」と声が飛ぶ。



「謙遜しないでよレザノフさんっ。何か見てるアタシ達までテンション上がっちゃうぐらいカッコ良かったよっ」



ポアラの言葉に目をキラキラさせながら頷く
三人の若い人間達の表情にレザノフは優しく
微笑みを浮かべて見せた。

ロード達はかなり興奮気味である。

まあ、それこそ無理もないであろう。

此処最近、手にしたギフトの力を鍛える様に
日々を過ごして来た三人にとって魅せられた
ギフトを極めた者の姿であったのだから。



「また、教えてくれよっ、レザノフさん。俺ももっと強くなりてぇんだッ!」


「私も、同じく」


「ちょっと…アタシだって強く…」



我こそ先にとレザノフに頼み込んでいた三人
の最後に声を発したポアラは途中で何かに
気を取られて言葉が擦れて消えて行った。

そして、言い終わる事よりも先にポアラは
先程まで自分達が居た場所へと駆け出す。

レザノフの勝利に湧く歓喜の輪に一人だけ
混ざれない女の子が居たのだが、ポアラは
真っ先に其の事に気付いて踵を返した。



「…どうしたの?どこか具合でも悪いっ…?」



ポアラに肩を抱かれ俯いて居たのはシェリー
であり、ロード達も慌てて駆け戻る。



「シェリー…?何かあったか…?」


「…いえ。違うんです…どこか痛いとかじゃ無くて…」



緩りとポアラに頭を撫でられながらシェリー
の目に段々と涙が込み上がって行くとロード
達も心配そうにシェリーの姿を覗き込む。

レザノフは此処最近のシェリーの違和感に
既に気が付いて居た、此処へ来てからも時折
何かに悩む様な素振りを見せて居たからだ。



「…私は…プレジアに明確な目的を持ってやってきました…それは今も変わりませんしっ…途中で投げ出す事もしませんっ…でもっ…辛いんです…っ…私を護ろうとしてくれる皆さんが傷付いて行くのが…ッ…!!」



シェリーの声は段々と喉を締め上げる様な
悲痛の叫びへと変化を遂げて行く。

ロード達は言葉を失っていた。

シェリーの抱えていた不安と悩みとは、自分
だけが戦うチカラを持たず、只々、誰かの背
に隠されて護られる事。

そして何よりも辛いのは其の人間達が
傷付き、倒れそうになっている事。



「私も…戦うチカラが欲しいですッ…!」



シェリーの声は皆に届く。

だが、王女が傷付く事など誰も望まない。

チカラはあったとしてもバルモアとしては
其れでも尚の事シェリーを下げて護らねば
ならないであろう、レザノフは唇を噛んだ。
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