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第五編第三章 溢れる涙は光と成りて
破滅の猛攻
しおりを挟むリゼアが一歩を踏み出す度に其の大地が
大きく大きく振動を引き起こして行く。
大地のギフトの特性である“振動”の強さで
レザノフの足元はぐらつきを繰り返す。
そして鉞を振り上げ、荒々しくレザノフに
向けて振り下ろすリゼアの攻撃は鉞の重さで
地面にヒビ割れを幾つも入れて行く。
其れを見たレザノフは流石に施設の庭が
鉞に因ってぐちゃぐちゃにされる事を心配
すると地面に何かの細工を一瞬でしたのだ。
そうして細工された地面に鉞が触れると鉞は
高い金属音を奏でて地面に弾かれてしまう。
「…ギフトのチカラか…恐らくは鉄鏡のギフトの特性“硬化”であろうが…此処まで広範囲とは恐れ入る…」
レザノフは鈍色(濃い鼠色)の鉄鏡のギフトの
オーラを身体と地面に纏わせる事で鉞の特攻すら弾く鋼の硬度を付与して見せた。
「だが其れで某を止めたと言うのは筋違いである…恐れ慄き…滅せよ…!」
巨体を軽々と動かしながら、鉞を振るう此の
リゼアの攻撃に触れてはならないとレザノフ
は頭で理解が出来ている。
大地のギフトの特性“振動”の厄介な部分は
触れた箇所から振動を送り込む事の出来る
事にあり、鉞をガードしよう物なら恐らく
身体の芯に向かって振動を流し込まれ数秒
動きを封じられてしまうだろう。
其の一瞬とはイコールで死に繋がる。
リゼアの一撃は其れ程迄に強烈に移る。
レザノフは其の猛攻を回避を最優先にして
躱し切ると牽制の為に弾丸を放って距離を
保つ事を意識していた。
「レザノフさん…押されているのか?」
「あの…リゼアって男…めちゃくちゃ強いよね…このギフトのオーラの重たい感じ…」
二人を見ながら心配そうに話すシャーレと
ポアラの少しだけ後ろでロードは着物を掴み
レザノフを見つめるシェリーの肩に触れる。
「大丈夫だ…何があっても必ず護る…後ろにいろ…シェリー…」
「……………はいっ…」
其の歯切れの悪い返答にロードはシェリーを
見遣ると、シェリーの目は哀しみに覆われて
いる様にロードからは見えるのだった。
「どうしたレザノフという者よ…防戦一方である…其れでは某を滅する事は敵わぬ事也」
「戦いに必要なのは間髪入れぬ攻めだけとは限りません…見極めて参りましょう…其の場其の場のベストをね…」
「逃げ腰の男が何を言うか…笑止である」
二本の鉞の猛攻を躱し切るレザノフは未だに
リゼアの攻めに生まれている隙を完全に突く
タイミングは測り切れておらず、防戦一方は
続いている最中にリゼアが動きを止める。
「時間の無駄であった」
「どうか致しましたか?」
「貴公が本気を出さない事に某が合わせる必要は無いのだ…そして…本気で滅しに掛かろうとも恨む事は勘弁である…」
リゼアに纏われたギフトと体内の波動の
急激な上昇を見せる其の姿にロードは気を
改めて引き締めると身構え言葉を放つ。
「来るぞ…アレが覚醒だッ…!」
ロードの言葉で全員がリゼアに目を向ける。
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