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第五編第三章 溢れる涙は光と成りて
再び蠢く蜘蛛
しおりを挟む談笑が続く森の街フォレストールの孤児村
ピースハウスの中庭は平和そのものである。
だが、そんな平和はこんな戦乱の時代では
悲しきかな、ほんの一瞬で崩れ去る事も全く
持って珍しい事では無かった。
其の空気に真っ先に気が付いたのなシェリー
の護衛隊隊長であるレザノフだった。
胸の内ポケットに所持している二丁拳銃に
手を掛けると、近付いてくる嫌な威圧感の
位置を探ろうと左右に目を配る。
そしてレザノフの其の動きを見たロード達も
異変を察知し三人でシェリーを囲む様にして
何者かの急襲に備えるのだった。
「出てきなさい…既に殺気は此方側に充分過ぎる程に届いていますよ…?」
森林に囲まれたピースハウスを囲む様にして
ロード達にとっても見覚えのある一団が隊を
成して其の姿を現した。
「コイツ等は…」
瑠璃色の装束に身を包み、蜘蛛の紋様が
入れられた仮面を身に付ける其の一団。
そして其の中央には唯一仮面を付けていない
坊主頭に白い髭を蓄えた眼鏡の男が見える。
其の歳の入った貫禄ある男性は白い着物の
上に瑠璃色のマントを羽織っており大きな
幹の枝の上から腕組みをしてレザノフに向け
鋭い睨みを、効かせて見下ろしている。
「…死蜘蛛狂天ですか…。ディルという男は手を引いてくれたのですがね…」
「…甘いのだ…あの男は。金に成る此の依頼を捨てる理由が解らぬ…。某が姫の命を奪い…終わりにしてしんぜよう…」
其の大男は太い枝の上から跳び降りると着地
と同時に地面に重さでヒビ割れが起こった。
「其れは私が…此の命に代えてもさせません。ロード殿達は修行後…私が出ましょう。姫様…必ず御護りしますからご安心下さい…!」
レザノフの言葉にロード達は首を縦に振って
固い表情のまま頷いて見せたが、シェリーは
重苦しい何かに押し潰されそうな表情を見せ
俯きながら、前に立つロードの着物を掴む。
其れに気付いたロードはシェリーが何かに
悩んでいる事に気がついたのだが今は目の前
に迫る死蜘蛛狂天の連中に集中を始める。
「邪魔をするなら滅してくれよう…」
部下に合図をした死蜘蛛狂天の幹部クラス
らしき男が片手用の二本の鉞を構える。
蛮族の様な野蛮な構えを見せた其の男とは
対照的に銃を構えるレザノフからはやはり
気品の様な物を感じざるを得ない。
そして荒々しく鉞の刃を二本とも地面に
向けて構える其の大男の身体と鉞が段々と
大地のギフトのオーラに包まれて行く。
色は黄蘗色(緑みのある黄色)、其の大男の
力によって生み出された黄色い岩の礫が
宙へと浮かび始めると声が飛ぶ。
「某の名は…リゼア・ゴードトプス。貴様を滅し…姫の命を頂戴する者也」
死蜘蛛狂天幹部リゼア・ゴードトプス。
彼の前に立ちはだかるのはバルモア国王家
ノスタルジアの護衛隊隊長レザノフ。
今、決戦の火蓋が落とされる。
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