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第五編第三章 溢れる涙は光と成りて
姫にとっての此の国
しおりを挟むパイロに怒られバツの悪いU・Jは仕方ない
と言った雰囲気で帰りの支度を始める。
「行くのか?U・J」
「ん?ああ、めんどくせぇがP・Jのゴキゲン取らなきゃな…何か買って帰るかね」
「修行付けてくれてありがとっ、三割ぐらいは役に立ったよ」
「ポアラちゃんは手厳しいねぇ…」
「何れにしてもやはり、U・Jは強いな。其処は改めて感じさせて貰ったよ…」
ロード達との会話の中で、最後に放たれた
シャーレの言葉にU・Jはピタッと動きを
止めると無言の末に溜息を吐いて口を開く。
「…チカラなんて無けりゃあ…戦うのにこんなに迷ったり悩んだりする事も…ねーんだけどな…めんどくせぇけどよ…」
ロード達は突如として変わり果てたU・Jの
空気感を見て、何かを感じ取った。
どこか辛そうで形容し難い其の横顔をロード
達は其々どう見たのだろうか。
言葉に詰まり、返答が出来ていないロード達
を見てU・Jはほんの少し微笑むとバギーの
運転席の扉を開けると後ろを振り返る。
「おーいっ、サーガ君。途中まで乗ってけよ」
「ああ、お邪魔するッス…。じゃあザックさん…また顔出しに来るッス!」
「ええ。お気を付けて、子供達の顔も見に来て上げてください」
「おッス…」
ザックに会釈をしたサーガは服を翻すと後ろ
に止めてあるバギーの所で待つU・Jの位置
へと向かおうと足を踏み出して行く。
だが、其の途中でサーガはバルモアの王女
であるシェリーの姿を目にすると頭の中で
とある国家事情を思案し始める。
「(バルモアの王女…政府から見た彼女は今…革命軍に公使として招かれてる客人扱い。そんなシェリー姫を殺して冷戦を解き…自分達から戦争の火種を作るのは愚策ッス…)」
其の呟きの最中にサーガは足を止めた。
「(だけど…帝国軍には黙認をさせて、裏を動かしてるなんて噂もあるッス…俄然、政府の真意が読めて来ないスね…)」
まじまじとシェリーを見つめて思案していた
サーガにシェリーは首を傾げて尋ねてみる。
「…なにか?」
「あ…いやいや、えーっと…姫様から見てプレジアってどんな国ッスか…?」
ふと声を掛けられて慌てたサーガの口から
出たのは至極単純過ぎる疑問であったが
其の問い掛けにシェリーは笑顔を見せる。
「とても綺麗で素晴らしい大地や人…戦争が終わり皆が自由に行き来出来る未来でこの光景を多くの人に知ってもらいたいです…」
「人…ッスか…命狙われたりしてるのに何でそんな事言えるッスか?」
「覚悟の上…だからです…。私は一つの約束を果たす為にここに来ているんですから今は泣き言を言ってられません…」
シェリーの言葉にサーガは息を呑む。
まだ十代でしかも、外に出て危険に晒される
事なく暮らして行けるだけの地位を持った姫
の言葉や覚悟には感じられなかったのだ。
此の子は強い、そう確信させられた。
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