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第五編第一章 反乱と革命の序章
途切れた楽譜
しおりを挟む孤児村ピースハウスで仲の良かった四人組。
其の輪が記憶障害を抱えていたエルヴィスの
固く閉ざされていた記憶の解放を機にいとも
簡単に崩れ去って行く現実を前にしてノアは
両膝を付き砂を手で掴む様にしながら涙が
溢れて行くのに抗う術を持たなかった。
背後から近寄ってきたティアに優しく包まれ
抱き締められたノアは声を出して泣き出す。
溢れる涙と共に土砂降りの雨に晒される。
世界は涙の様な雨で一面を覆われた。
其処から一ヶ月程の月日が流れた後に、ノア
とティアの二人もピースハウスから旅立ちの
刻を迎えており、四人の姿は完全に孤児村の
孤児院、此の施設から消え失せる事に。
其の思い出は唯、止まった時間を表すかの
様にアルバムにひっそりと仕舞い込まれる。
エルヴィスの思い起こされた過去。
ノアの家族が殺された事件。
解き明かされる事の無かった此の二つは
孤児村ピースハウスでの出来事と直接関係は
無く、またいつか明かされる別の物語。
護国師団反乱軍の総長と参謀。
独立師団革命軍の総長と副長。
同い年で親友と自他共に認められていた
少年少女達の運命の歯車が崩れた日の物語。
反乱と革命の序章。
此の壮絶な哀歌の演奏の先の音符は今此の時
目の前の楽譜は途切れて見る事は出来ない。
此の二人の指揮者が倒れぬ限り哀歌の演奏は終わる事を知らず結末は天のみぞ知る事。
こうしてひっそりとアルバムは閉じられる。
「此れが彼等…彼女等の対立の始まりです…希望に満ち溢れたあの頃がとても懐かしい…思い返す度に辛く、重い何かがのしかかって来ます…!」
歯を食いしばり肩を震わせて目を閉じる
ザックの姿に全員が静まり返る中、ロード
がザックを心配する様に腰を上げる。
「悪ィ…ザックさん…。辛い事話させちまって。でも…ありがとう…俺等にとっては…どうしても知りたい事だったんだ…」
「ええ…大丈夫ですよ。希望はまたいつか光り輝く筈です…あの子達がまだ生きているんですから…!」
「ああ!元気は元気そうだったぜ?アイツ等よ…!」
笑顔を浮かべてまた腰を下ろしたロードを
見てザックも穏やかな表情を取り戻す。
「…そうか。ロード君は四人全員と最近会ってんだよな…」
U・Jがボソッと呟いた言葉に返答をした
ロードを横目にシェリーが何かを思い出した
様に口を開いて続けて行く。
「ここまで送ってくれたのはティア様だったんです…目前まで来て足を止めたのはそういう事だったんですね…」
「ティア…あの子、顔ぐらい見せてくればいいのに…」
寂しそうに呟いたザックの言葉にまた一度
ピースハウスのリビングが静まり返る。
そしてザックがもう一つ付け加える。
反乱軍は異国民を排除し、護国を成し遂げて
此の国の文化や民を其の手で護る為。
其の反乱軍を指揮するエルヴィスに対して
ノアは革命軍を組織し此の国に新しい文化を
取り入れる事でバルモアが危険では無いと
此の国の民に示し、安全を保障する為。
そして、親友に考え直させる為である。
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