RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第五編第一章 反乱と革命の序章

反乱と革命の序章“後奏曲”

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人が変わった様な目付きで立ち上がった
エルヴィスはザックの横に立ち口を開く。



「俺は…こんなに。なあなあと生きてちゃ行けなかった…今迄世話になったな。今日で出て行くよ…ザックさん…」


「…ッ!待ちなさいッ!エルヴィスッ!!」



ザックの声掛けにも立ち止まる事をしない
エルヴィスの背中にザックは立ち尽くす。

ノアも固まったままに動けずに居た。

乱雑に荷物を纏めたエルヴィスは何の躊躇いも無くピースハウスから雄々しく歩き出す。

そうしてやっと飛び出して来たザックとノア
そして、騒ぎを聞き付けたティアとアドリー
は背中を向けたエルヴィスの姿を見遣る。



「待って、エルヴィス!何処に行くの…?」


「さあな。だが、思い出しちまった以上…俺は一人…こんな所で幸せに浸ってちゃ行けなかった…俺は…力を付けてバルモアの連中を此の国から排除しなきゃならねぇ…」


「待ってよ…バルモアの人だけが悪者みたいに…プレジアの人間だって戦争でバルモアの人間を多く殺してるじゃないかッ!!」


「るせェ!!甘ェんだよそれじゃ。そんなんじゃいつまで経っても傷跡は残るばかりだッ…!!」


「だからって排除しただけじゃ其の傷跡は増えて行くだけじゃないかッ!!」



周りは驚いていた。

此処までノアが声を荒げてエルヴィスの
意見に反抗する事は一度たりとも無かった。

そして互いの信念が折れないと心の内で理解
した様に睨み合う二人の無言の空間の中で
二人の身体に異変が起こり始めた。

エルヴィスの身体には金色の雷のオーラが
纏われノアは銀色の風のオーラに包まれる。

激しさを増して行くオーラの渦が二人の背後
で猛々しく姿を変えていき、雷の獅子と風の
狼が互いを牽制し合う様に雄叫びを上げる。

其れを見たザックが間に入り静止する。



「ダメですよッ…二人とも…此れ以上は…」



其れを見たエルヴィスが雷のオーラを仕舞い
込む様に暗い表情で瞳を閉じると気が抜けた
様にノアの身体からも風のオーラが消える。

そして、膝を付いて座り込んだノアを一瞥
したエルヴィスは入り口で震えるティアと
アドリーの元へ歩き出して行く。

そして二人に小声で声を掛ける。



「悪いな…アドリー、ティア…。俺は行かなきゃいけねぇ…ノアを頼むな…」



そして踵を返して歩き始めたエルヴィスは
今回ばかりはどの声にも振り返る事も立ち
止まる事もせずに雄々しく進む。

アドリーはエルヴィスの言葉の意味に
「ノアを一人にしないでくれ」と此の様な
真意を見つけ出すと拳を握り締める。

そして心の中で残酷な現実を知るのだ。

「エルヴィスが一人になる」そう考えた
アドリーはティアの顔を今にも泣き出しそう
な目で見つめると、声を絞り出す。



「ごめんっ…!!」



そうして歯を食いしばったアドリーは涙を
一粒溢して振り返ると急いでエルヴィスの
背を追う事を選んだのだ。
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